宇宙世紀0156年。第七コロニー群〈リュミエール〉は、静寂の宙域に浮かぶ、光と緑に満ちた人工楽園だった。戦火から遠く離れたこの場所で、16歳の少女・アヤ・ミナセは、母とふたりで暮らしていた。

彼女は、医療研究施設で働く母の影響で、幼い頃から人の心に敏感だった。だが最近、感情の“気配”が、言葉よりも先に胸に響くようになっていた。怒り、悲しみ、希望――それは、ニュータイプとしての覚醒の兆しだった。

その夜も、アヤは奇妙な夢を見た。

赤い光に包まれた戦場。爆音の中、ひとり立つ少年。彼の瞳は、まるで彼女を見ているかのように、まっすぐだった。

「……誰?」

目覚めたアヤは、胸の鼓動が収まらないまま、窓の外の星々を見つめた。夢の中の少年の声が、まだ耳に残っていた。

その翌日、コロニーに一隻の艦が寄港する。連邦軍の試験部隊〈ノクターン〉。最新鋭のモビルスーツ〈RX-Λ〉の運用試験のため、短期駐留するという。

アヤは、母の仕事の関係で〈ノクターン〉の医療班に同行することになった。軍艦の格納庫で、彼女は夢で見た少年――レイ・アルヴァと出会う。

彼は、静かにアヤを見つめた。

「君……見たことがある。夢の中で」

その言葉に、アヤの心は震えた。初めて会ったはずなのに、互いの存在を知っていた。ニュータイプ同士の共鳴。それは、運命の始まりだった。

レイは、〈RX-Λ〉のテストパイロットだった。寡黙で、仲間とも距離を置いていたが、アヤにはなぜか心を開き始める。

「戦う理由なんて、もうわからない。ただ……君の声が、僕を引き戻してくれる」

アヤは、彼の孤独に触れ、何かを変えたいと思った。だが、〈ノクターン〉の任務は、コロニーに潜む反連邦勢力の掃討。平穏な日々は、戦争の渦に巻き込まれていく。

そして、アヤの中に眠る力が、少しずつ目覚め始めていた。

――星の夢で出会ったふたりが、現実の戦場で再び交差する。

それは、魂の共鳴と、恋の始まりだった。