数日後、あの現場を見ていた子たちが何人かで家に来てくれた。
母親は何事かと驚いていた。
「あら、みんなどうしたの?」
「まいちゃんは?大丈夫なの??」
「あははっ…大丈夫だよ!ごめんね〜!みんなのことびっくりさせちゃったよね…怖かったよね…。」
「ううん、そんなことないよ!」
「あの、それでね、今日はそのことでお話しがあって来たの…!」
「そうなの?どうかしたの?」
「まいちゃんママ、あの時のこと知ってる?」
「あの時のこと?あっ!ううん…苺香に聞いても何にも答えてくれなくてね、ずーっとだんまりしているから困ってるの…。」
「そっか…。ねぇ、まいちゃんママ?」
「なぁに?」
「これから言うこと、全部信じてくれる?」
「うん、信じるよ?」
「…じゃあ、教えるね。」
勝手過ぎるけれど、この後の会話は聞いていない。
あの日の光景を思い出したくもなくて、耳を塞いでいたから何も聞いていない。
でもみんなは勇気を振り絞って、あの日に起こったことを全て事細かに話してくれたらしい。
みんなが帰った後、母が私をぎゅっと抱きしめてくれた。母の胸の中はとても温かかった。優しい温もりがあって心地良かった。
「苺香…ごめんね。本当にごめんね…。酷いこと沢山言ったね…。辛い思いいっぱいさせたね…。」
母の目からは、無数の涙が流れていた。
そんなに大事に思っていてくれたのだということを肌で感じることができて嬉しかった。
でも、“私がママを泣かせちゃった”“私のせいでママたちが悲しい思いをしている”という罪悪感の方が強かった。
実際は自分のせいではないことは分かっている。
でも、そう思わずにはいられなかった…。
そして翌日、母親が学校に連絡。
事が進み、新年度早々に親同士の話し合いになった。
話し合いの結果は、何故かこちらが嘘つき呼ばわり。
先生たちも煙たい表情をしていたそう。
さらには、先生たちは“いじめ”ではなく、“好きな子に素直になれない男の子のあるある”じゃないかと言い、話を聞き入れてくれなかった。
「桜花さん、何かあったらその場で言ってよね…。彼は桜花さんのことが好きでやっちゃったことだと思うからさ、気にしないであげて?」
新しく担任になった先生が放ったこの言葉には、小学校二年生の私でも呆れた。
あんなことする人が、あんなことを言う人が、私を好きなはずがない……。
そして、気にするなとは何事……。私は、“一生もの”の傷を負っているのに。
私の心の奥底で何かが壊れた音がした。
──もう、この人たちを信頼するのは止めよう。
そう心の奥底から自分に誓った瞬間であった。

