シオン─貴方が心に灯してくれた光の花─



一年生として過ごした最後の日。


この日は途中までいじめっ子はいなかった。

だからとっても楽しく帰ることができた。

久しぶりに友達と笑い合い、笑顔や会話に花を咲かせた。

笑顔で帰路を歩いたのは、実に初日以来だった。

だから、あの時の感情を今でも忘れない。




──めっちゃ楽しい!!友達と帰れるって良いなぁ…!


──こんな幸せな時間が永遠に続けば良いのに……。




…ところが、すぐに現実へと引き戻されてしまった。




彼と合流してしまったのだ…。


「おい、ランドセル持てよ!!」


この一言で私の心が揺れた。


このまま従うべきか、それとも逆らうべきか。


“いつまでもこのままじゃダメ…!”


そんな気持ちが勝ち、勇気を振り絞って反抗してみた。


「…やだ!自分で…自分で持ちなよ…!」

「あ?なんだと!」


キレイな舌打ちが聞こえ、震え上がった。




竦む足を何とか動かし無我夢中で走り続け、何とか彼から逃げることに成功。




“やった〜!素直に嫌だって言えば、楽しく帰れるんじゃん!”




心の中で淡い喜びを噛み締めながら、平和で幸せな時間を過ごした。





だが、そんな時間は長くは続かなかった……




「クソババア…生意気なんだよ…死ね…!」




耳元で彼がそうやって囁いた。




その直後、私の身体は宙を舞い、時がゆっくりと進んだ…。




その後、時の流れが元の速さに戻ったかと思えば、顔面から地面に着地。


左の額や瞼から生温かい何かが垂れる感覚があった。


私は意外に冷静で、咄嗟に移動ポケットからティッシュを出して押さえた。


「まいちゃん?!大丈夫!?」

「まいかちゃん!!痛くない!?」

「大人の人呼ばないと!!」

「どうしよう!?」


皆んなが焦る中、私の頭は冷静だった。

“…やばい、服に血が付いちゃった!怒られる…!!”

今思えば、焦るところはそこではない…笑


「転んじゃった(笑)けど、大丈夫!(笑)」


この時は、痛みよりも何とも言えぬ恥ずかしさが勝ち、笑うことしか出来なかった。


幼馴染のお母さんに家に連れて帰ってもらうと、母親が焦っていた。そのままの足で外科に連れていかれた。


あの時にお医者さんに言われた言葉や、その時の光景を今でも忘れない…。


「瞼のところは数週間で治るけど、この額の大きな傷は一生残るよ。」


衝撃的だったし、ショックだった……。


「膝とか肘は怪我してないみたいだね…(笑)どうして、こんなところ怪我したの…(笑)」


苦笑いを浮かべながら言われた、この質問にはどうしても答えられなかった。


だって、これ以上親に心配は掛けられないと思ったから…。


「何であんたはそんなにどんくさいの…?顔から受け身を取るなんて信じらんない…。大体、どんな転び方をしたらそうなるの…?」


ここでも俯きながら無言を貫いた。




本当は……本音を言えば、あの時に全て打ち明けたかった…。


でも、情けないことに声にはならなくて



“信じてくれないかも知れない”



そんな考えが、私の胸をずっと押さえつけていた。