私は見晴らし台に着いた瞬間、思いっきり息を吸い込んだ。
“見晴らし台”は近所にある、私だけが知る秘密の場所。
何があっても、この場所だけは誰にも教えたくない。
ここの景色や空気は最高だ。いや、格別だ。
辺り一面色んな花で埋めつくされていて、良い香りがして落ち着く。
そして、いつもは大きくて威圧感がすごいビル群が小さく見える。沢山の車だって小さく見える。
いつもは肩身が狭くて息苦しいのに、ここだと息がしやすい…。
だから、いつも住んでいる世界とは全く違う世界にいるのではないかという気になれる。
少しだけ身を乗り出すと、夕焼け空がとてもきれいで空気も澄み渡っていてとっても気持ちが良い。
「ちょっと君!何してるの!?」
という声が聞こえてドキッとして振り返る。
振り返った先にいたのは、私には到底釣り合わない、一人の好青年だった。
色白、高身長でスタイルも抜群、そして何と言っても顔が整っている。
いわゆるイケメン…。
そして、純粋な心優しい人。
彼は私に『君にピッタリな可愛い名前だね!』と言ってくれた。
最初は揶揄われているのだと思って、正気なのかを確認したら、嘘は付いていないみたい。
今までの男子とは違う。
中学の人の顔は歪んでいてまるで“悪魔”のようで周りにドス黒い影や紫色の影を纏っているのだが、彼だけは歪んで見えず白い影を纏っていて光輝いていた。
キラキラとしたオーラからして、陰湿なことなどはして来なさそう。
そして、今までとは違ったドキドキ感。
何か分からない感情。初めて感じる胸のざわめき…。
私の人生では、こんな夢のような出来事が起きるとは思っていなかった。
それからというもの、ほとんど毎日会うようになった。
私は毎日、学校が終わると一目散に走り見晴らし台で彼のことを待つ。
正直、私のネガティブ日記にドラマのような描写ができて、言葉では表せないくらい嬉しい。正に夢心地。
彼が来ない日もあったが、これが生きる楽しみになっていた。
彼に会うにつれて一つの疑問が浮かび上がった。
“どこの中学校の子なのだろう…”
少なくとも、私の学校の子ではない。
だが、彼は毎日私服で来るため、学校が分からない…。
ここの地区には他に四校ある。だから、どこに通っていてもおかしくない。
でも、一つだけ引っかかることが。
何気なく抱いた疑問によって、彼の秘密を知ることとなった。

