中は(行ったことないけれど)高級クラブみたいなきらびやかな雰囲気だった。僅かにトーンダウンされた照明に、シャンデリアやあちこちにある鏡がキラキラ輝いている。壁にいくつも絵画が飾ってあって、店自体は下品な感じを受けない。
私が一歩踏み入れると、男達の視線が一瞬で私を捉えた。
由佳はベネチアンマスクのようなアイマスクをしていた、と言っていったが付けているのは半々で付ける義務はなさそうだ。
すぐに支配人と思われる蝶ネクタイにタキシードに身を包んだ男が近づいてきて
「お客様、当店のご利用は初めてで?」と聞かれた。
「ええ、でも紹介状は…」と言いかけると
「紹介状は先ほど確認させていただきました。身分証などはお持ちですか?」と言われ、私は西園寺さんが偽造した免許証を見せた。
支配人と思われる男はその身分証をじろじろと嘗め回すように見ていて
だ、大丈夫かな……
ちょっと不安になったが、堂々としなければ。やましいことなんて何一つありませんと言う意味で首をかしげて見せる。
「確認させていただきました。”浅田様(偽名)”ようこそ”クラブA”へ。ここは完全会員制の出会いのクラブとなっておりまして」
説明を遮るように軽く手を上げると
「出会いもできるし、遊べるとも聞いたわ。楽しませてくれる?」とちょっと微笑むと、支配人と思われる男がちょっと虚を突かれたように顎を引いた。
『いいぞ彩未。その調子だ』と天真の声が左耳から聞こえてきた。まるで囁かれているようでくすぐったが、私は笑顔を繕った。
「貴方のような美しい方なら存分に楽しめるかと」と支配人は似非くさい笑顔を浮かべる。
「こちらのアイマスクは着用してもしなくても結構です。顔バレしたくないお客様も多く、もしそのような場合…」と支配人の言葉を聞いていると
『着用するな。連中の目に留まりにくくなる。彩未は特に目が印象的できれいだからな』と左耳に装着したイヤホンから天真の声が聞こえてきて、
天真……この会場のどこかにいるのね、と実感できると急に安心感がやってきた。
てか『目がきれい』だなんて、これ西園寺刑事さんにも聞こえてるよね。……恥ずかしい。
「結構よ」私はアイマスクを押し戻すと、支配人と思われる男は私がコートを脱ぐのを手伝ってくれた。「コートはこちらでお預かりさせていただきます」
「よろしく」
と言うと同時、さらに会場内の男たちの視線が集まった。
『オトコ共は彩未に目が釘付けのようだ』と天真の面白くなさそうな声が聞こえてきて、私はちょっと苦笑。



