■リベンジ A編。


”A”の店はキャバクラやホストクラブ等が立ち並ぶ、所謂繁華街の一角の、しかし周りのビルと比べると少しお値段が高めの建物だった。

一階部分はキャバクラになっていて、二階に”クラブA”と堂々と看板が構えられている。

「意外と堂々と看板かまえてるんですね」西園寺刑事さんに問いかけると

「まぁ殆どが非合法だが集客の為だろうね。この店もきっと一か月も経たないうちに撤退されるに違いないけど、点々とする資金を考えると奴らは相当稼いでいると見える。何かきな臭いな。ただの出会い系クラブとは思えない」西園寺刑事は鼻がムズムズするのかその場所をこすっていた。

「裏で相当あくどいことをしてるんだろ。暴力団がバックにいりゃこの店で資金洗浄してる可能性もあるな」と言いながら

天真はボーイに扮する為三十分程前に店に入っていった。残った西園寺さんが後部座席から身を乗り出し

「これを耳に」と耳栓より小さなイヤホンのようなものを手渡してきた。

「我々三人を繋ぐ所謂命綱と思ってください。会話は全部我々には聞こえている」

私は大きく頷きイヤホンを耳に装着した、幸い髪で隠れるし大き目フープのイヤリングに目が言ってそこまで気づかないだろう。

「いいですか?何かあったらまず逃げることを専決に」と西園寺さんに言われ、これに関しても私は大きく頷いた。

時間は9時を少し過ぎたところだ。

「もうそろそろ行った方がいい」

私はこれまた天真が買ってくれたタスマニアウール100%の白いロングコートに身を包み、クラッチバッグを持つと車を出た。

待ってろよ”A”

絶対、私と天真でぶっ潰してやるんだから!

と意気込みながら、むき出しの階段を上った。ウォーキングのおかげかその足取りはぐらつくことなくしっかりとしたものだった。それともこれは私の気持ちの表れなのか。

二階部分はワンフロアしかないみたいで深紅の扉に金の文字で”A”と書かれた扉があり、その前に由佳が言った通りいかにも裏社会っぽいいかつい二人の男が立っていた。

彼らは私を一瞥すると、一瞬だけ鋭い視線を向けたもののすぐに営業用の笑顔を取り繕った。

「すみません、ここは一元さんお断りのクラブなんですよ」

「ええ、知ってるわ。紹介状なら持ってる」

”おどおどするな。堂々と。少し斜に構えるぐらいがちょうどいい”と言う天真の言葉を思い出して私は余裕のあるふりで二人を見ながら由佳から借りたカードを見せると、二人の男はそれをまじまじと見つめホンモノだと認識したのか二人で扉を開けてくれた。

「ようこそ”クラブA”へ」

さぁ潜入開始だ。