ドレスは70万近くした。流石に悪い気がしたけれど天真は満足そうだ。

「毎日でも着て欲しいぐらいだ」

それは流石に無理……

ああ、私ってこうゆうときいっつも天真に流されるんだよねー…

そうしてドレスもゲットした。あとは土曜日を待つだけ。

緊張するかと思ったけれど、(最近は慣れたけど)相変わらずの激務に追われ、合間にトレーニングやウォーキングをしていると緊張なんてどこへやら。意外と平然としている私に自分自身がびっくりだった。

私ってこんなに気が大きかったっけ。

いつもおどおど人の顔色を窺ってばかりだった私が変われたのは―――天真のおかげだよ。

そう言えば前に西園寺刑事さんにこっそり聞いた。亡くなった千尋さんはいつも勝気で男勝りの性格だった、と。だから私に最初に目をつけたのは意外だった、とも。

いつも自信に漲っていた千尋さん。だから事件のことは相当ショックだった筈。そして死を選んだ―――?或いは何らかの事件に巻き込まれて”A”に殺された?

考えたって五年も前の、しかも会ったことのない人のことは全然分からなくて、想像だけが私の中をぐるぐる回る。

そして迎えた土曜日。私たちは今HPに掲げられていた住所の近くに西園寺刑事さんの車を停めその中に居る。

知らない間に天真は”A”のボーイにちゃっかり採用されていて、あらかじめ店内の見取り図なんかを手に入れてくれた。

「ここがVIPルームって言われてる。所謂女を強姦する際に使われる部屋だ」

見取り図の奥まったひと際分厚い壁に囲まれた部屋。ここで由佳は―――

「いいか、お前はそんじょそこいらの男に興味がないフリをしろよ?狙うは俺も顔を知らないボスだ」

「天真も知らないのに私が分かるの?」

「ああ、やつらは目を着けた女をいいようにするのが趣味みたいだからな」

「悪趣味だな」と後部座席で西園寺刑事さんが顔を歪める。

「最初は乗り気でいけ、もしそう言う雰囲気になったら俺が飛び込む」と天真が言った。

「で、僕の登場。君が襲われている所を暴行の現行犯で逮捕できる」

作戦はシンプル。

ごくり、喉が鳴ったけれど言い出したのは私。やるしかないのよ。