慌てて振り向くと、階段の一番下の段に天真が壁に背を預け、腕を組んでこちらを見ていた。

え!?いつからそこに!


「俺が惚れたんだから、サイコーに決まってんだろ」


惚れ!?

ちょっ!西園寺刑事さんにそんなこと言わないでよ!恥ずかしすぎるよ!

「彩未、もうお前上に上がれ。戸締りは俺がするから」

天真が優しく微笑み私は素直に頷いた。

惚れた……なんて……

あぁ、まだ顔が熱い。今までたまに言われるけどそれは二人っきりのときにだけで。誰か他人に知られるのってこんなに恥ずかしいのか。

天真はすぐに戻ってきた。

「あ、ご飯まだだったなー、冷蔵庫に何があったかな」わざとらしく冷蔵庫を開けようとすると、背後からきゅっと天真に抱き締めれた。

「今日は疲れたろ?デリバリーにしようぜ?ピザやポテトとかチキンとかジャンキーなもの食べながら、ベッドの中で映画でも見よう」

「何それ海外映画みたい」私は笑った。

「将来の予行演習だ。たまにはそう言う夜があってもいいだろ」

天真―――西園寺刑事さんが帰って行ったから、てっきり窓枠に座ってまたタバコとウィスキーを飲むのかと思ってたけど。

天真の中で少しずつだけど変化がある。千尋さんのこと、忘れなくていいよ。でも私との想い出でそれを上書きできるといいな。

その晩、私たちは宣言通りピザとポテトをデリバリーで頼んで缶ビールを飲みながら行儀が悪いと思いつつも、異動式のテレビをベッドの前に置いて寝ころびながらそれらを食べながら笑ったり、衝撃的な出来事に思わず天真にしがみついたり。

「彩未は怖がりだな~」と天真の笑い声が響き

外の雨音はまるで気にならなかった。