「えぇ!!先生と結婚!」由佳は食べていたマルゲリータピザを喉に詰まらせそうにして慌ててビールでそれを流し込んでいた。
「いや、まだしてないよ。考え中」
「何でよ!超!いい物件じゃない!高身長、顔もそこそこイケメン。何と言っても藤堂総合病院の副理事長!そんなスペックの男ごろごろいるわけじゃないんだよ!」
由佳は片手にピザの欠片。片手にベコッと音を立たせながら缶ビールを握り、ソファの隣に座った私に迫って来る。
由佳……怖い。
「確かに天真といると自然体になれるっていうか、気を遣わないから楽だし、家事も無理させられないし」
「じゃ……」と由佳が口答えをしようとしたら
ピンポーン
部屋のインターホンが鳴った。
「誰だろこんな時間に」と由佳がインターホンモニターまで向かっていくと「あれ?西園寺さんだ」ときょとん。
西園寺刑事さん?
知らない関係でもない、由佳は西園寺刑事さんを家に迎え入れた。
「すみませんね夜に。これお土産」と手に掲げていたのは私が買ってきたケーキ屋さんと同じ箱。
わ、被っちゃった。違う店にするべきだったかなぁ。
と思っていると
「わぁ、私が好きなケーキ屋さんのケーキがこんなにもたくさん♪」と由佳はご機嫌だ。由佳って時々思うけど変なとこ前向きだよね。
しかし「何だか怖いなー、こんなに一気に好きなものがくると、後で何か起きそう」
「やめてよ、不吉なことを言うのは」
私が唇を尖らせていると
「麻生さん、お久しぶりです。随分雰囲気変わったね、最初誰だか分からなかった。女子会中だったか。間が悪かったかな」と西園寺刑事さんはバツが悪そうに頭の後ろを掻く。
「いいですよぉ。西園寺さんは男の人って言うより女友達みたいなものだから」と由佳がからから笑う。
「それはちょっと……男と見られてないのはだいぶショックだな」西園寺刑事さんはそれはそれははっきりと背中に影を背負ってどよぉんと落ち込む。
そうだよ、由佳。いくら西園寺刑事さんと親しいっていってもそれは失礼過ぎる……ん?この二人どこまで親しいんだ?
「ちょうど良かった。ピザちょっと冷めちゃったかもですけど食べてきます?二人じゃこの量食べきれなさそうだったし」と由佳が言い西園寺刑事さんは断るかと思いきや「じゃぁお言葉に甘えて」と私たちが座っているソファの向かい側にある座椅子に座った。
「それにしても麻生さんと由佳さんは仲良しだね、何の話してたんですか」と西園寺刑事さんがピザの一欠片を口に運びながら
「それがぁ、彩未、天真先生にプロポーズされたみたいですよ」
と由佳がにやにや(勝手に)報告している。
ゆ、由佳!西園寺刑事さんと天真って幼馴染じゃなかった!?そんなこと軽々しく言わないでよ!
「あいつが?」と西園寺刑事が目を丸めている。
何ヨ、これじゃ私が嘘をついてるみたいじゃない。



