私的に二人に痛手を与えられた今、復讐は終わったと思ったが天真は元居た席に戻っていった。
何で?
手を引かれて席に連れ戻されると
「復讐第二弾だ」と天真が妖しくウィンク。
第二弾?そんな作戦聞いてないんだけど。
目の前で二人は私に殴られてふてくされている。もうにこにこ取り繕うこともしていない。
ま、そうだよね。
「彩未がさー、まだおたくに未練があるのかおたくの話ばっかするのヨ」と天真が知坂の方を見た。
知坂の顔がぱっと明るくなった。
「ちょっ!天真!」
慌てて天真の腕をちょっと引くと
「三か月にいっぺん居酒屋さんに連れてってくれるとか、家賃は折半、随分な堅実家だったとか」
それは想い出や惚気と違って単なる嫌味では?
天真がにっこり悪意のない温度で言って知坂は顔を顔を青くして俯いた。
「彩未は家賃を搾取されながら、献身的に家事をこなし、おたくの都合の良いデリヘル嬢に過ぎなかったわけだ」
「ちょっと、何このひと!言って良いことと悪いことがあるでしょ!」と浮気女がテーブルを叩いた。
「だって事実だろ?」と天真が腕を組む。
なるほど、天真の復讐第二弾って知坂を精神的に追い詰めてくってことか。怖っ!私はちょっと痛い目に遭ってくれればそれでいいと思ってたけど、追い詰めるときはとことんまでってこと?私、天真を怒らせられないな…怖すぎる。
「この女だって知坂と付き合っていい思いしたでしょ?」と浮気女が私を指さし
そりゃ幸せと感じたときはあったよ。あったけれど、たった二週間しか一緒に過ごしてない天真の方がうんと幸せだった。
「いい思い?どこが。さっき天真が言ったけど私はやることちゃんとやってたし、この先の未来だって夢みてたのに」
「夢見てたって、まさか結婚ってこと?」
ぷっ
浮気女が吹き出した。
「あんたバカじゃない。あんたみたいに家事しか特技なくて地味で、連れて歩くの恥ずかしいって知坂言ってたよ」
「真子!」今度は知坂が浮気女の口を手で塞いだ。
「俺は最初から連れて歩きたいと思ったけどね。前の彩未でも」と天真がのんびり言ってワインを口にする。
「天真、少し黙ってて」と天真をちょっと睨むと天真は肩を竦めて口を尖らせた。
「知坂、ふーん、そんなこと思ってたんだ」私がゆっくりと頬杖をつくと知坂は益々顔色を悪くさせて下を向いた。
もうどこを見たってあんたの味方はいないのよ。
「私だって知坂に不満はあったわ」私が小さく吐息をつくと、知坂が顔を上げた。
「セックスが下手」
にっこり微笑むと、今まで顔を青くさせていた知坂の顔色がさっと真っ赤になった。



