だって天真、いつもとまるで別人。いつもボサボサ髪はラフにかっこよくセットしてあったし、またどこかで買ってきたのか?黒に近いグレーのスリーピースのスーツをビシっと着こなして、赤いシャツに黒いネクタイ。いつもボロボロの革靴はピカピカに磨かれてるし。一見派手に見えがちだが、それは天真にとてもよく似合っていた。まるで最初から天真の為に作られたような…もしかしてオーダー?

「ど、どこへ行ってきたの?」

「あ?貸倉庫。ここじゃ服が収まりきらないからこうゆう特別なときの服は全部そこに預けてある」

なるほど……

それにしても…変わり過ぎだよ!もはや別人!

誰このイケメンは!

確かにこのかっこなら知坂が怯む筈だけど……

天真ってちゃんとするとこんなにかっこよかったの!?モデルか俳優でも通じるよ。

思わず鼻血が出そうになって慌てて鼻を押さえてると

「彩未もきれいに変身したな」と天真は満足そうに頷いて、私の額にちゅっとキスを落とす。

「ちょっ!」

まだこの姿の天真に慣れてない私はそれだけで顔が真っ赤になってしまう。

「初々しい反応は嬉しいが、俺たちは付き合ってもう二週間って設定だからな。動揺しないでくれよ?」と色っぽくウィンクをされて
そっか、私たちは付き合ってる設定。同棲(同居)もしてるし。

こんなことで赤くなってたら知坂に怪しまれる。

二人揃って病院の前でタクシーを呼んだ。

例のレシートの所在地を告げるとタクシーは走り出した。

と、とうとう始まるんだ。と思うと手に変な汗をかいたが天真がその濡れた手をそっと握ってきた。

「大丈夫だって、きっとうまく行く」

ああ、天真の手ってやっぱ落ち着くなぁ……って安心してる場合じゃない。

「手!私今手汗すごいから」慌てて手を離そうとするも


「そゆうとこも可愛い」


天真は微笑。

ああ、今日の天真は天使に見えるよ。