そうして決行日の水曜日まであっという間に過ぎていった。

この日は天真の言った通り、通常なら19時閉院のところ一時間早く切り上げて18時閉院になった。

後かたずけを猛ダッシュで終え、私は二階に上がって早速準備しようとしていると天真は出かける素振りで

「俺行くとこあるから。ちゃんと時間には戻って来るから彩未はゆっくり念入りに支度しろよ?」と頭を撫でられた。

そ、そりゃ着替えのときとか天真がいるとやりにくいけど、でもこのタイミングでどっか行っちゃう?

心細さと不安が混じって思わず天真のよれよれの白衣の裾をきゅっと握ると

「だーいじょうぶだって。もう彩未は一人で変身できる。俺の方も多少は様になってた方がいいだろう?」

様に?益々どこに行くのか気になったが、

「大丈夫だ、すぐ帰って来る」と言って私の手をかわしひらりと白衣を翻して行ってしまった。

戻って来るって言ってたし、今まで天真が私を裏切ったことがないってことを信じて、私は自分の支度に集中することにした。

服は、こないだ天真が一番気に入ってた黒いワンピースにしよう。二連パールのネックレス、カメオのブローチ付とカメオとダイヤのイヤリング。うん、これが一番いい。靴は、知坂といるときに履いたことがないマスタード色がきれいなエナメル素材の十センチのピンヒールのポインテッドトゥのパンプス。バッグもこないだ買ってもらった某ブランドの新作バッグ。

全身トータル200万超えって歩くだけで怖い気がするけど、でも天真も一緒だから大丈夫だよね。

と変な安心感から、不慣れだったメイクも随分早い手さばきでこなすことができた。問題のアイラインも今日はきれいに決まった。

そうやって念入りに支度をして終えたけど、肝心の天真が帰宅してない。

ってかどこ行ったのよ。

ホントに来てくれるんだよね、とそわそわと待ってると

「お待たせ」

と天真の声が聞こえ、ほっと安心して顔を上げ天真を見ると私はみっともなく口を開いた。