考えたら天真って色々謎だ。
あと少しって言うところでベールを剥がせる気がするのに、どうしてもそのベールを剥がせない。
午後の診察を終えて、私はいつもより早めに帰り支度をした。
今日から天真に晩御飯を作るって約束したし。私は香坂さんに「お先に失礼します」と言い、他の看護師さんたちにバレないようこそこそと二階に上がった。
よし!今日はご馳走作るんだから!と意気込んだものの、天真の狭いダイニングキッチンは文字通り狭くて、慣れてないってのもあるのかな、意外に大変。
そう言えば天真の嫌いなものって何だろう。もう一週間以上一緒に生活してるのに、そんなことも知らないなんて。
がくりときて、それでも気を取り直して料理を再開させることに。
まずは王道だけど肉じゃがだよね。これだったら嫌いな人いない筈。そう言えば居酒屋さんで唐揚げも食べてたな。じゃぁお次は唐揚げ。チョレギサラダと大根の味噌汁を何とか時間をかけて作ると
「すっげぇいい匂い」と天真が上がってきた。
「美味しいかどうか分かんないけど」としっかり前置いてテーブルに出来上がった料理を並べていると、天真はよだれを垂らしそうな勢いで席についた。
缶ビールも冷やしておいたから、満足してくれるかな。
と一人不安そうにしていると
もうすでに手をつけていた肉じゃがを頬張りながら天真が「うまっ!!」と目を輝かせた。
「てかいただきますはぁ?ちゃんと手洗ったの?」
「『いただいてます』そして手は下でちゃんと消毒してきた」天真は早口に言って、もうすでに次の唐揚げに手を伸ばしている。
良かった。少なくとも口に合って。
天真は私が作ったどの料理も「うまい!」と言ってそれはものすごいスピードで皿から料理が消えていった。
「彩未、いい嫁さんになるよ。結婚しちゃう?」
ブーーーー!
危うく飲んでいたビールを口から吹き出しそうになった。
「なっ、なっ…!」何言い出す!と言いたかった。
「冗談、冗談」と天真は笑ったが
「冗談がきついよ!」
何だ、冗談か…
って何がっくりきてるの私!



