約一時間と言う短い散歩から帰ると、やっぱ足が疲れていて10センチのピンヒールを脱ぐとよろよろ。
「大丈夫か?捻ったりしてないか」と天真がしゃがみこむと私の足首をまじまじと見つめてくる。
「だ、大丈夫だもん、あれぐらい」と強がってみせてみたけど、午後の診察に影響させないため、ベッドにごろりと横になると足を投げ出して電話をした。
天真は行くとこがあるとかって言って出かけて行った。どこへ行くの?とかは聞かなかった。ウザい女にはなりたくない。
『それって恋じゃない?』最近お見舞いに行けなかった由佳に電話を掛けて相談すると、由佳はこの頃すっかり元気になったみたいで『うふふ』と意味深そうに笑う。
「こ、恋!?」
みんなそう言うけど違うから!
『だって天真先生のために頑張ってる彩未、可愛い』
「か、可愛いのは由佳だよ。そう言えば加納くんとはあれ以来普通にできてる?」
『うん、相変わらず忙しいけどあの事件のことちょっとずつ忘れていこう、前を向いて生きていこうって二人で話し合った』
そっか、良かった。加納くんともちゃんとうまくいってるみたいで。安心した。
『私のことはいいけど、私はずっと彩未が心配だったから楽しそうで良かった』と由佳は笑った。
「あー、私の方は何とか大丈夫」
もうここ最近色々あり過ぎて疲れてるっちゃ疲れてるけど。
『天真先生がね色々教えてくれるの。アフターサービスだからって言ってたけど、彩未のこと心配だったんだよ。だから一緒に住んでることも知ってるよ。先生ね、私のことばかり心配して自分のこと後回しにしてる彩未のこと心配してた』
天真―――由佳にそんなことを?
って……勝手に私のこと話してんじゃねー!
『いい先生だよね、天真先生。正直知坂くんと別れて正解だと思う。彩未はさ、天真先生みたいに優しく守ってもらってくれるひとの方が絶対合うよ』
優しく守られてる―――
だけじゃイヤ。



