嘘つきな天使


午前中の診察を終え、天真が相変わらずコンビニの袋を下げて上に上がってきたとき

「きょ、今日から一週間ぐらいトレーニング休んでいい?」と切り出した。

「何で?」天真はきょとんとした。

「天真が買ってくれた靴、履き慣れるまでこれ履いて外でウォーキングしてこようかと。せっかく買ってくれたのにちゃんと履いて歩けなかったら意味ないし」
とってつけた言い訳になっちゃったかな……

私は千尋さんに負けたくない。天真が認める最高にいい女になりたい。ときっと本心では思ってるんだ。

「なるほど、足も鍛えられるしいい運動になるな」と天真は特に気にした様子はなさそう。

お昼を食べ終え天真が買ってくれたたくさんの靴の中から一足選んで

「じゃ、行ってくる」と言うと「俺も行く」と言い出した。

「え?何で近所をうろうろするぐらいだよ。天真つまんないよ」と言うも

「ついてく」の一点張り。もしかして”A”のこと気にしてる?と思ったけれど最近その話題が上ることもなかったから、単に私が慣れない靴で転んで怪我したら心配だからって言う理由なんだろうな。時々思うけど天真って過保護だよな。

あんまり頑なに断っても悪い気がして、こうして二人で散歩と言う名のトレーニングに出かけることになった。

ウォーキングとは言っても私は最初から目的地を決めていた。ここから500m圏内にあるスーパーだ。

一週間以上も仕事をしていてちょっと余裕が出てきたって言いうのもある。最寄りのコンビニの食材じゃやっぱり足りない食材もあるわけで。実は今日から夕食をご馳走しようと思ってた。これも千尋さんを意識してるって言われたら嘘になるけど、でも今天真の最も近くに居るのは私なんだから。できることは自分でしたい。