その日、私は天真と向き合って眠った。何をすると言うわけでもなく、何となく彼の顔を見て寝息を聞いて安心して、

「ねぇ天真、手繋いでいい?」とおずおずと聞くと

「腕枕でもいいぞ♪」と天真はにやにや。

「手がいいの」と私の首に伸びてきた筋肉質の腕をぺちっと払うと天真の腕は大人しく引っ込んでいった。



「天真の手、あったかくて大きくて安心する」



「そっか」天真はそれ以上何も聞いてこなかった。さっき泣いてたことときっと関係あるって鋭いこの人は何か感づいている筈だけど、それ以上何も聞いてこない。

でもその距離感が嬉しい。

今は何も考えず眠りたい。


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――


次の日の朝も目覚ましを掛けてないのに5時半に目が覚めた。

いつもなら天真はこの時間ジョギングの筈なのに、私が目覚めるとにこっと笑顔の天真のドアップが……

「へ!?」

な、何で天真が!?

みっともなく声をあげると

「だって彩未、手が離れていったら寂しいだろ?」と天真は繋いだままの手を軽く持ち上げた。もしかして昨日の夜からずっと手を握っててくれたの?

「彩未も起きたし、今からジョギング行ってくるわ」と天真が腹筋だけで起き上がる。

天真の手が離れていこうする。

やだ……まだ手を繋いでいたいよ―――

思わずきゅっと天真の手を握り返すと、天真は小さな子供をなだめるように私の頭をぽんぽんと撫で

「一時間程で帰ってくる。それまでにうまい朝飯作っておいてくれ」

と言い置き、額にちゅっとキスをしてきた。

わ!

その衝撃的な行動で天真からぱっと手を離した。

もぉ!人の扱いがうまい……って言うか女の扱いがうまい??

で、でも天真は五年間彼女居なかったって言ってたし、でもでも嘘かもしれないし。

でも――――嘘だったら、あんな風に元カノの写真を飾り付けておくことなんてしないよね。