嘘つきな天使


久しぶりのコーヒーをゆっくり味わっていると……あちこちから(主に男性)の視線が…イタイんですけど…

「すっげぇ美人、オトコがうらやましい」とか
女性からの声も「あのひと凄くきれいじゃない?女優さんかな、モデルとか?」

こそこそと聞こえる『美人』と言う聞き慣れないワードに耳が赤くなるのがわかる。

だって28…って言うかこないだ誕生日だったからもう29年間か。言われたことなんてないもん。

「やっぱ俺が見込んだ甲斐があるな」と向かいの席で天真が得意げに背を逸らしている。

確かに天真と最初に会った時から『きれい』って言われてたし、それも一理あるのかなぁ…天真って実は見る目ある?(←自分で言う??)

コーヒーを運んできてくれた男の子に私の荷物も持ってきてもらって、店長に挨拶するとずっと急に辞めたこと、しこりになっていたけれど「よく働くいい子だったから勿体ないけれど、次の所でも頑張ってね」と快く送り出してくれて、肩の力が抜けた。

コーヒーを飲み終えた私はようやく帰れると思ったけれど、今度はデパートまで引っ張っていかれた。

今度は何?

もう天真の考えてることが分からないよ。若干うんざりしてると

そこでも「あら、天真くん」とデパートの化粧品売り場のこれまたきれーな販売員のお姉さんたちから声を掛けられ

「よっす、久しぶり~♪今日はこいつに合う化粧品を買いに来たんだ。ついでにメイクのやり方もレクチャーしてやって」と勝手に言ってるし。

「あら、すっごい可愛い子。今のままで十分じゃない」

「今日はこんなだけど今まで化粧したことないんだとよ。だから教えてやって」

天真…これ以上もう余計なこと言わないで…

がくり、と項垂れていると

「あら、そうなの~?そういうことならお安い御用よ。ここの化粧品はどれも素人さんでもきれいに使えるって評判なの」と販売員のおねーさんはわくわくしながら私を店の奥のテーブルへ引っ張っていくと、これまたたくさん

「これとこれと、あとこれも使った方がいいわね」とずらりと並んだ化粧品の数々。そのどれも見慣れなくて私の目には初めて目にする宝石のようにキラキラして映った。

これは……解けない魔法を掛けられたのかな。私は今シンデレラ状態。神様の存在は信じてないけど魔法使いの存在を思わず思い浮かべてしまう私は現金だな。

と言うわけで化粧品の販売員のおねー様方からレクチャーを受け、あとは練習とばかりにたくさん化粧品を買わされて(言うまでもなく天真が買ってくれたわけだけど)

とうとう帰れる……

ぐったりしている私の腕を天真は取り、

今度は何?と若干うんざりしていると

「もう夜も遅いし、彩未疲れてるだろうからどっかで飯でも食っていこうぜ」と言い出した。

そ、それはありがたい提案だけど早くこの高い服と靴を脱ぎたい……しかもこの恰好で行くとしたら今度はどんな高級な店?もう私その辺のファミレスでも十分なんだけど。

と思っていたが天真は私の手をぐいと引いて

「あそこなんてどうだ?今の彩未には不釣り合いかもしれねーけど」と天真が指さしたのた、The居酒屋さん的な場所で

今日一日、一生縁のない所ばかり連れ回されたからこうゆうとこちょっとありがたかったり。もしかして天真気を遣ってくれた??

と言うわけで私たちは大衆居酒屋の暖簾をくぐった。