「びっくりしちゃいましたよー、すっげぇ美人が入ってきたから気になってたんですけど。彩未先輩だったとは。声で何となく分かりましたけど」と注文を受けた男の子が私たちのテーブルにコーヒーを運んでくれた。
び、美人!?
「顔は……いじってなさそうですね。元のまんまだし。化粧と服装と髪型?」と男の子はじーと私の顔を見つめながら首を捻っている。
「し、失礼な。私整形なんてしてないわよ」とちょっと男の子を睨むと「失礼しました」と男の子は白い歯を見せて笑った。
「彼氏さんは元気スか?こんなきれいになったら俺なら勿体なくて外連れ出したくないな~、あ、逆か。見せびらかせたいって思うのかな」
彼氏……て知坂のこと言ってるんだよね。元々知坂はここの常連だったし。てか私知坂に一度も友達に紹介されたことないんだよね。それは私が可愛いから、とか言う理由じゃなく単に地味でブスだった私を見せたくなかっただけなんだよね。
そう思うとズーンと気落ちするが、あー!やめやめ!知坂とはもう終わったの!
しかし
「あ……実は……」別れた、そんでもって家を追い出された。とは
言えない。
「おたく何か勘違いしてるっぽいけど、彩未の今の彼氏、俺だから」
と、天真がとんでもないことを言い出し
「はぁ!?あんたとは…」と言いかけると、天真は自身の唇に指をやり「しー」と言いながら「美容院、服。誰が出してやったと思ってる」と私にしか聞こえない小声で言ってきた。
う゛……それを言われれると…
ぐっとテーブルの上で拳を握りギリギリと歯ぎしりをしたいのを堪えていると
「そっすか、すんません。俺あんま考え無しにすぐに口に出ちゃうみたいで」と男の子は何も悪くないのに苦笑いでその場を立ち去って行った。
男の子が立ち去っていってようやくゆっくりとコーヒーを味わうと
ああ、やっぱ美味しい。ここのコーヒー。とだいぶ落ち着いた。
天真はコーヒーを飲む前に砂糖とミルクをたっぷり入れていて
「あれ?天真ブラック派じゃなかったの?」てか天真がコーヒー飲んでるときって朝しか見ないし、砂糖とミルクを入れてるのをいちいち確かめたこともなかった。
「ブラックは苦手だ」
へぇ、そうだったんだ……
そう言えば最初に天真に貰ったシュークリームは少し甘めですっごく美味しかった。天真って顔に似合わずもしかして甘党??
「子供みたい」ちょっと笑うと、「うっせ」と天真が私の鼻の先を指で弾いた。
新しい天真の一面を発見できて、何だかちょっと嬉しいかも。



