言葉通りたくさんの服やアクセサリー、靴は全部天真が買ってくれた。
のはいいけど……
つ、疲れた……
普段履き慣れない10センチ近くもあるヒールのせいで足が吊りそうだし
「どっかで茶してくか」と言われたとき、私は初めて顔をぱっと上げてきらきらした目で天真を見た。
天真は顔を覆い、「そんな顔で見るな」と顔を逸らす。
何で……やっぱ分不相応な私がこんな着慣れないかっこでオシャレしてるの似合わない。
「お前、可愛すぎだっつーの」
へ―――?
「ちょうど良かった。あそこ割とオシャレだし」と適当に目についたカフェを天真が目配せして、もうどこでもいいよ、と色々諦めていた私は目を開いた。
「ちょ、ちょっと!あそこだけはダメ!」
私は天真の腕を引っ張った。
「何でだよ。お前足限界に近づいてきてるんじゃ?少し休んで回復させようぜ」
気遣いはありがたいんだけどね………
あのカフェ、私が働いていたカフェなのよーーー!!
あまりいい終わり方しなかったから行きづらいってのもあるし、何よりこの変わり果てた私の姿を見せられない。
けど―――天真の腕に縋ったまま天真は私を引きずりながらずるずるとマイペースにカフェに入っていく。てか力強すぎるのよ!
ああ……なんて展開!!
天真を引き止めることもできなかった私は結局カフェに入ることになった。店内はちょうどティータイム時だったのか適度に混みあっていた。駅も近く立地もいいからかな、ママ友同士のお喋り会とか、近くの大学の学生さんたちが授業の合間にちょっとお茶しにきたり、営業回りの合間にちょっと寄ってついでにPCを広げて仕事をしているサラリーマンとか。私の見知ったスタッフもそれぞれのお客さんの接客で忙しそう。
「いらっしゃいませ~」と明るい男の子(前に大学生って聞いた)が声を掛けてきて、私はなるべく目立たないように天真の高い背中の背後に隠れるように顔に手で壁を作った。
「俺、ホット(コーヒー)彩未は?」
と振り向かれ、ギャァ!振り向かないで!気づかれちゃうじゃない!
で、でも”あやみ”なんて珍しい名前じゃないし大丈夫だよね。
「わ、私も同じものを」と小声で言うと、カウンターから身を乗り出し
「先輩!麻生先輩じゃないスか!!!!?」
わぁ!!!早速気づかれた!



