嘘つきな天使


私は言われた通り下着姿になりバスタオルで全身を拭き、ナース服に着替え慌てて下に行くと、すでに受付時間ははじまっていたのか、二人ほど長いすに患者さんが座っていた。

「遅れてすみません」と香坂さんに慌てて謝ると香坂さんはあまり気にしてないようで「あの患者さんたちが早すぎるのよ。まだ受付時間まで5分あるから大丈夫よ」と言い方はそっけないけれど、怒られなくてほっ。

そして午後の診察がはじまり、とは言っても午前中の殺人級の忙しさと違って午後はいくらか患者さんが少なかった。
とは言っても忙しいには忙しいけれど。

午後の診察も無事終わり、最後の点検や戸締りを教えてもらってやっと長い一日が終わった。

「はぁ~」

口から太いため息を吐くと

「ご苦労様。疲れたでしょう。これお土産。お昼休みに買ってきたの」と香坂さんが白い小さな箱に入った何かを手渡してくれた。それはケーキ屋さんでよく見るタイプのもので

「差し入れですか?嬉しい」とわくわく受け取ると

「あら、藤堂先生からこれから麻生さんの友達のお見舞いに行くから適当に見繕ってくれって言われて用意したんだけど聞いてない?」

友達……由佳―――?

天真…天真だって疲れてるはずなのに、由佳のこと気遣ってくれるの?

その優しさに思わず熱い何かがこみあげてきた。

「て、適当に選んだわけじゃないのよ?今流行りのお店で並んで人気商品を手に入れたつもりだから」と香坂さんまでわたわた。

香坂さん―――

香坂さんは何か勘違いしているようだけど、私は香坂さんの優しい気持ちにも感謝してるつもりで。

「ありがとうございます」

私はきっちり頭を下げ、本格的に医院を施錠して香坂さんや他の看護師さんたちが帰って行くのを見届けて慌てて二階に上がった。

「天真、これから……」と言いかけたとき、やっぱり天真は着替えの最中で……てかここまでタイミングが良すぎるともう神様の仕業としか思えないよ。私の神様は居たり居なかったり、居ないと思ったら急に顔を出したり、居て欲しいときに居なかったり

なんて自由なんだ。