夜も6時を過ぎていて由佳と加納くんが働いている会社は定時を迎えたと言うのに、加納くんに連絡がつかなかった。
仕方なしにメッセージだけを送って、病院のURLも添付しておいた。由佳は意識が戻るのと経過観察のため2~3日入院が必要になる、と言う。
そう言えば由佳、加納くんは忙しい人だと言ってったっけ。
救急診察の診療代を一応私が立て替えようとしたが、天真が立て替えてくれた。
帰ろうかな、と思ってた時
「待て。お前メガネ壊れてるじゃん」と天真に指摘され、メガネを外すと
ホントだ……完全には壊れてないけどグラスの面にヒビが入ってるし、ブリッジ部分は歪んでいる。
殴られたときに壊れ掛かっちゃったんだ。
「大丈夫、見えないわけじゃないし」買い替えるお金もあんまないし、とは言えなかったけれど。
何を思ったのか天真は私の手を握り
「眼科へ行こう」と言い出した。
「え!」
「眼科って私目は大丈夫だよ」
「いいから、いいから」と言われ私は天真に連れていかれた。
眼科までの道を天真と歩いていると、何人かの看護師さんが
「え!嘘っ!あれって天真先生じゃない!」
「めっずらし~、あんま来ないのにね」
と噂話を聞いた。
「ねぇ天真、ここに知人が居るって言ってたけど、ここにも出入りしてるの?」と聞くと
天真は哀れなようなものを見る目つきで私を見下ろしてきて
「何で気づかない。ここの病院”藤堂総合病院”だろ?」
「え、うん……天真と同じ名前……」
と言った所ではっとなった。
「天真って……」
「そ。この病院の理事が俺の親父。俺は副理事長。ま、名ばかりだけどね。俺は親父のボンクラ息子」
ええーーーー!!!
そうには見えないけど、天真ってめちゃめちゃお金持ちのおぼっちゃま!?



