■急展開に追い付かない。
な、何……めっちゃ怖いんですけど…
まさか私の体が目当て!?ぎゅっと両肩を抱きしめると
「バーカ」と天真は軽くデコピンしてきて
「んなんんじゃねーよ、人を変な目で見るな」
天真……忘れてるかもしれないけど私も一応けが人。
「じゃ、じゃぁ私に何をしろと……?」
「そうだなー、これでどうだ?」と天真は右指を二本、左指を五本立てた。
「25?」その数字の意味が分からず首を捻っていると
「そ。ちょうど受付の女の子が寿退社で辞めちまった後でさー、香坂さん一人じゃ大変だから。25は因みに手取りだぞ?福利厚生はしっかりしてるし有給だってボーナスだってある。その上住む場所は二階だから出勤や退勤も楽々♪」
25…って25万!?てお給料のこと!?
今私の働いてるカフェの二倍以上の給料だよ!
「でも、受付事務でも資格とかいるんでしょ」25万やそれ以外の条件は美味しいけれど、天真と一緒に暮らすとか……私、まだこの人のことよく知らないし。顎を引いて何とか断る口実が無いかもごもご言うと
「資格が必要のない雑用係だ。誰にでもできる。
それに何より
俺の目の見える範囲に居てくれれば、俺が彩未、お前を守ることができる」
そんなこと言われると―――……そんなこんな私なんかを女扱いしてくれると―――心が揺らぐ。
「で、でも由佳は?由佳はもっと狙われやすいんじゃない?そっちの方が心配だよ」
「金田さんは西園寺の部下から24時間警護で守らせるから安心しな」
そっか……刑事さんが警護に当たってくれるなら安心かも。
「でも―――」
とまだ言い淀んでいると
「あー、面倒くせぇな」と天真はボリボリと頭を掻いた。
「わ、悪かったわね!面倒くさい女で!」思わず喚くと、天真の力強い腕が私の頭の後ろに回された。
そしてそのままほぼ強引に引き寄せられると、引き寄せられた力とは反対に優しいキスが落ちてきた。
びっくりし過ぎて目を閉じるのも忘れたぐらい。
てか……ここ病院!
慌ててキョロキョロと辺りを見渡すと一瞬のことだったのか誰もこちらを向いてはいなかった。とりあえずほっ。
「面倒くせぇけど、ほっとけないんだよ。
あんた、危なっかしくて。
大人しく俺に守られておきな」
天真の真剣な、切れ長のきれいな黒い瞳の中に戸惑った私が映った。
天真は―――知坂と違って私を女としてみてくれる。私を守ってくれる。
けれど
「ヤダ。
一つだけ条件がある」



