由佳が無事にその紹介してくれた女の子と連絡を取り終えたところで、初めて由佳は
「ねぇそのボストンバッグどうしたの?どっか旅行?」と聞いてきた。

しまった……ボストンバッグは天真の家に置いてくるべきだったか。でもあそこに帰るつもりもないし二日も泊まらせてもらうのは流石に悪い。天真も何も聞いてこなかったし、自分で何とかしろってことよね。

「えーっと……これは」

言っていいのか悩んだが、由佳の前で変な嘘をつくことは嫌だったから結局、昨日の出来事を素直に話すことになった。

「は!?何それ!」由佳は落ちくぼんだ目を目いっぱい開き、口を開けた。

「あ、あはは~誕生日の日にフられるなんて私らしいって言うか」由佳に余計な心配させてたくなくて私はわざとらしく笑った。

「何でそんなときに笑うのよ!」由佳は目を吊り上げて勢い込み、その勢いで私にふわりと抱き着いてきた。

「ごめ……ね……彩未は優しいから。ホントは真っ先に言いたかったんじゃない?それなのに私の心配ばかり」

由佳の体はすっかり痩せてしまっていてまるで消えそうだったけれど、柔らかなぬくもりがしっかりと伝わってきて、また泣きそうになった。

「それにしたっていきなり追い出すとか酷すぎだよ!昨日どこに泊ったの?言ってくれればうちに泊めたのに」

「いや……それが……成り行きで藤堂 天真の家に……」
由佳が目を開いたのが分かった。

「や、最初はネカフェとか考えたんだけど」

嘘……そんなこと考える余裕すらなかった。気づいたら天真の腕の中に居た。

「まさか彩未、一泊泊める代わりに変に要求されなかった?」と由佳が声を低める。

「ま、まさか!」確かにそう言う流れになったけれど、合意の上と言うか…
てか合意の上言うなよ自分!昨日のことを考えると忘れていた熱が顔や体を走る。

「人のこと言えないけど彩未、もっと自分を大事にしなきゃダメだよ」と由佳が目を吊り上げたまま声を再び低める。

いつぶりだろう。こんな風に由佳に怒られるのって。



「大事にしたよ。

それにすっごく大事にされた。サイアクな誕生日だったけど、天真が居てくれて救われた」

「彩未!」

ガバっと由佳に抱き着かれて、思いのほかその力が強かったのかそのままひっくり返りそうになったけれど、何とか踏ん張り

「今度から一言相談して」由佳は泣いていた。

十分自分が辛い思いしてるときに私のことまで。やっぱり由佳は私のサイコーの親友だよ。

由佳はその後、知坂に会いに行く!と言って聞かなかったけれど私はそれを必死に止めた。

知坂とのことはもう終わったことだ。

それよりも由佳の問題の方だ大事だ。