行為が終わっても藤堂 天真は裸の私を背後からきゅっと抱きしめてくる。まるで離さないかのように。しとしと降る雨音がまるで優しい子守唄のように聞こえる。
知坂なんて終わったらすぐ寝ちゃうのに。
終わっても尚、藤堂天馬は私の耳を甘噛みしてきたり、解いた髪を撫でたり。
まるで私のこと宝物のように扱ってくれる。
最悪なバースデーだったけどいいこともあったな、と、天真の腕の中で疲れたのかそれともアルコールのせいかいつの間にか私はうつらうつら。
完全に眠る前に天真は一言呟いた。
「やっぱこんな雨の日に出会えたってのは運命なのかもな。
もう忘れていいかな」
随分と意味深な言葉に聞こえたけれど眠気には勝てない。
彼の温かい腕の中が心地よかったのもある、私はいつの間にか寝ていたようだ。
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習慣って怖い。この日も私は目覚ましもないのに5時半に目が覚めた。
最初、見慣れない光景に戸惑ったが、
「そっか……天真の部屋かぁ…」昨日……致してしまったことが急に恥ずかしくなって私は羽毛布団を顔まで引き上げた。自分がまだ裸身に何も身に着けていないことが感覚で分かる。
てか天真は?
昨日すぐ隣に居た天真の姿はなく、ぬくもりすら残っていなかった。
まさか昨日の”アレ”は私の妄想……?んなわけない。私の下着やら服なんかが足元にきれいに畳んであって、これ天真がやってくれたのかな…と思うと急にまた恥ずかしくなった。
てかあいつどこへ行ったんだよ。
私はやっぱ一晩だけのお相手で、もう飽きたのか?
私はぶんぶん首を横に振った。違う―――と思いたいのに、知坂にフラれたばかりで妙な期待もしない。
私は服を身に着けると、天真の部屋をゆっくり眺めた。昨日あまり見る余裕がなかったけど、妙に物が少ないって言うか生活環があまり感じられない。ベッドから立ち上がるとキョロキョロと辺りを見渡した。
部屋にはベッドと小さなチェストぐらいしかない。何となくチェストの上を見ると伏せられた写真立てが置いてあって気になった。
敢えて伏せてあるのを見るのも気が引けたがどうにも気になった。
シンプルな写真立ての写真は、きれいな女の人が映っていた。



