ドサッ……
私の持っていたトートバッグが床に落ちた。
「どーゆうこと……」
いや、説明されなくても分かる。
この場合説明を求めているんじゃなくて。
部屋の扉を完全に開けて私が中に入ると
「あ、彩未……!帰ってくるの早かったんだな」と知坂が慌てて言い、みっともない様子で慌ててパンツだけを履く。一方の女性は羽毛布団を胸元まで引き上げ顔を逸らしている。ここまで来て逃げかえるような神経ではなさそうだ。その図太い神経は諦めを物語っているのか、それとも知坂は自分のものだとでもいいたいのだろうか。
「早かったって今何時だと思ってるの?10時過ぎだよ。知坂、今日が何の日だったか知ってる?」
「何の日……?記念日とかじゃねーだろ…」
記念日よりもっと大事な日があるじゃない。私の同僚だって私の誕生日だって知っててくれたわよ。
私は床に転がった女の派手な色のブラジャーを女に投げつけてやると
「出てって!ここは私と知坂の家よ!」と怒鳴った。
「おい!彩未っ!待てって!」と知坂が歩いてきた。私は手近に転がっていたクッションも知坂に投げつけてやると
「サイテーだよ!知坂!」と怒鳴り、投げつけたクッションが顔に当たったのか知坂はクッションを払うと
「出て行って欲しいのはお前の方だ。最初は俺に従順で何でも言うこと聞いてたのに、最近やたらとお節介やいてくるし正直ウザいんだよ」
え――――?
「親が早く結婚しろとか煩いから結婚しても俺や俺の親に絶対逆らわなさそうな女を選んだつもりだったけど、最近のお前面倒」
「知坂……何言ってるの……私のこと好きでいてくれたんじゃ…」何とか紡ぎだしたのは何と弱々しいことか。
「好き?最初からお前のことなんて好きになったことなんてねーよ」
うそ――――



