「念のためだけど”A”の会員所か何か分かるもの今でも持ってる?」と医師に聞かれ由佳は慌ててブランド物の財布から赤い色をしたクレジットカードサイズのカードを取り出した。それは本当にクレジットカードぐらいの分厚さでかなりしっかりした造りでゴールドの色をつけたAの文字がでかでかと載っていた。
医師はスマホで写真を撮ると、
「こっちでも色々調べてみるけどあんま期待はしないでくれよ?それと気が変わったらこれに内容を書いて持ってきてくれればいつでも”処置”するから」とA4サイズの紙は何故か由佳ではなく加納くんに手渡した。
加納くんの手の中にある紙をちらりと見ると『人工中絶同意書』と書かれていて、この医師は親切なのかそうじゃないのか、と思わず目を吊り上げたくなった。
「あ、それと今度来るときは午前中の9時~12時。午後は4時~7時だから」と念を押され、大した結果も出ず勿論何かをすることもなく私たちは半ば追い出されるようにその医院を後にした。
最後に
「あ、そこのあんた」
と私を指さされ、私が振り返ると医師は椅子を反対向きに座り背もたれに両腕を乗せて、口元が何やら色っぽい雰囲気で上がって
「名前、聞いてなかった」
「麻生 彩未―――です」
何で私が答える必要がある?患者じゃあるまいし。
「彩未。良い名前だ。またいつか会おうぜ」ちゅっと投げキッスをしてくる。
はぁ!?
もう会わないし!
こんな変態な医者誰がお世話になるものですか!



