診察結果で分かったのは、由佳が妊娠四週目に入っているってこと。つまりやはり妊娠一か月。レイプ犯に犯された日と照らし合わせると加納くんとの子と言う線が薄くなってきている。
しかし可能性はゼロじゃない。

「おたくらカップル、最後にセックスしたのは?」と医師がズケズケと言い

加納くんは顔を赤くしてから

「たぶん、一か月ぐらい前……ここ最近由佳が調子悪くてそれどころじゃなかったし…」
てことは加納くんの可能性もあるってことか!

「ふーん、そのとき避妊は?」

「……した…つもりです…」

ってことはやっぱりレイプ犯の??ダメだ、これじゃ堂々巡りだ。

「あの……私何かの本で読んだことがあります。妊娠中でもDNA検査ができるって。それで加納くんの子じゃなかったら考えることってできるんですか」思い切って聞いてみたが、医師はあんにゅいな表情で頬杖をついて

「通常DNA検査は妊娠7週目以降しかできない。現段階では俺んとこでは無理だ」

そう……だったんだ……自分の浅知恵が恥ずかしくなって俯くと、換気の為に開けられていたのか僅かな窓から閉められた淡いピンク色のカーテンがふわりと揺れた。何かで聞いた。産婦人科のカーテンは妊婦さんを安心させる為ピンク色が多いって。ピンクって意外に落ち着くものだな。この古びた診察室でもそれだけ目にしたら少し落ち着く。

しかし

「わ……」

そこから侵入したのか埃が目に入り、私は慌ててメガネを取り目を擦った。

ぼんやりとした視界の中、似非くさい医師が目を開いて私を凝視しているのが分かった。

な、何……?想像以上にぶさいくだったから驚いたとか??慌ててメガネを装着しようとしたが、彼はそのごつごつとした手でその手を押し戻した。案の定大きな手は程よく筋肉がついていて―――思った以上にあたたかい。まるで私の手が包まれているかのような感覚に陥ったが、このセクハラ医者!とすぐ考えが変わった。慌てて払おうとしたもののその手は力強くなかなか離れていかない。


「あんた、すっげぇきれいな顔してんな」


へ――――……!?

最初何を言われたのか理解できずにメガネをかけることも忘れて目をぱちぱちさせていると

「ダイヤの原石を拾ったみたいだ」と医者はぶつぶつ。

だ、ダイヤの原石!?この私が!?

ないない!このひと、私よりきっと視力が悪いんだな。可哀想なものを見る目つきで彼を眺めていると、私の考えを読んだのか…てか読心術??

「俺は視力2.0だ」とキッパリ。

2.0!

そのことが本当だったら相当なブス専だわね。

「わ、私のことからかってないで由佳のこと何とかしてください!」慌ててメガネを掛け勢い込むと

「まぁ手はないわけでもないがな?紹介状を書いてやるからここ当たってみてくれ。何かいい方法が見つかるかもしれん」

と医師はテーブルに乗せられた白い紙にスラスラと何かを書き始めた。