ガシャン!と言う派手な音の数秒後にボスン、と何だか酷く間抜けな音を立てて、しかし無事ゴミ袋の山がクッションになってくれたのか私はどこかを強く打つこともなかった。驚くほどに痛みも感じない。

振るえる両手を宙にかざすと腕に多少のガラス傷がついているものの、派手な怪我もない。

天真の言った通りだ。

すぐ隣に落ちたであろう天真を見ると「いてて、腰打った」とこちらも軽症みたいで安心した。

しかし

「キャー!」

私が叫ぶと

「どうした!?怪我でもしたか!」と天真が私を覗き込んできたが

「て、天真が買ってくれたドレスが……敗れてる…」ガラスに突っ込んだ際に引っ掛けたのか裾の一部が破れていた。

天真はきょとんとして

「そんなこと……?」と言って額を覆った。

「そんなことって、これいくらすると思ってるの!私弁償するお金ないんだよ!」と目を吊り上げると

「言ったろ、それはお前にやったものだって。それにそれぐらいなら修理に出せば何とかなる」

天真は何が可笑しいのかくつくくつ笑っていて

「お前……あんな怖い思いしておいて心配するとこ、そこかよ」と今度は声をあげて笑った。

だって70万近くするドレスだよ。

『おい、ぐずぐずするなよ?早くそこを離れろ。残党がいるかもしれない。仲間がお前たちを迎えに行くからそれに乗れ』ショウは電波妨害をしたと言ったけれど、そのショウがつかまって電波が復活したみたいだ。西園寺刑事さんの声が聞こえてきて私たちは思わず顔を見合わせた。

「行くぞ」天真に手を引かれて私たちはゴミのワゴンから抜け出した。

「天真、髪にガラスの破片が」と言って手を伸ばそうとすると

「怪我するから離れてろ」と言い、天真は頭をふるふると降った。

ガラスの破片が舞い落ち、薄暗い路地裏でその光はきらきらと輝いてきれいだった。

天使がいるのなら、きっとこんな風なんだろう。とてもきれい。