VIPルームと言われる部屋は豪華なソファセットがあり、サイドボードには見るからに高級そうな酒がたくさん並んでいた。
しかし、どこをどうみても普通じゃない。
部屋の半分を見るからに分厚そうなカーテンの仕切りがしてある。
私がカーテンの仕切りを開けようとすると
「そこままだダーメ」とショウと名乗る男が私の手を掴む。
「そうだ、忘れてた。私お手洗いに行きたかったの。あるんでしょう?」カーテンを後ろ手で閉めると(結局中は見れなかった)
「ああ、そうだったな。こっちだ」とショウは一つの扉を開けた。そこは広いユニットバスになっていて、何でこんな所にシャワールームが?と不審に思ったがこのショウと言う男が情事の後に利用するのだろ思ったら納得がいった。
「じゃ、お手洗い借りるわね」
扉を閉める際もショウは何かを疑った様子がなかった。
きちんと扉が閉まるのを見届けて、私は慌てて左耳のイヤホンが歪んでないかを確認して
「潜入成功。ボスの名前はショウ。年齢は30代前半。身長175㎝ぐらい。それぐらいしか分からないわ」
と慌てて言うと
『分かった、俺もそっちに向かう』と天真から返事が。
『こっちもいつも踏み込める準備を』と西園寺刑事さんの声も返ってきた。
「でも天真、部屋の外に見張りが居ていかにも屈強そうだよ。あんなのと闘ったら騒ぎになるんじゃ…」
『大丈夫、手は打ってある』
正直、少しほっとした。二人と繋がってると思うと安心できる。
「じゃぁそろそろ戻るわ……」と言いかけたとき、酷いノイズが入った。思わず顔をしかめて耳から一瞬だけイヤホンを抜き取り再び装着するとノイズは消えていて、そこから音が聞こえない。一瞬、故障かと思ったけれど単なる電波の不具合ね、きっと。
用も足していないのにジャーと水だけを流すと、疑われないため
「ロングドレスって久しぶりで疲れちゃうわ」と軽く裾をまくってドレスと同じゴールドのパンプスの先を見せた。
「今日のあんたには最高に似合ってるぜ」とショウはニヤリと笑い、すでに腰掛けていたソファの隣に座るよう促してきた。
「ブランデーはいける?」と聞きながらもすでにいかにも高そうなボトルから私の分のグラスに琥珀色の液体を注ぎ入れている。
「いけるけど、そんなに強くないわ」
”彩未、出されたものには口をつけるな。何が入ってるか分からない”ってさっき天真は言ってたけど……飲まなきゃ怪しまれるんじゃ……
と思いつつもあまり警戒していると、この男に感づかれる恐れがある。
「お酒の趣味がいいのね。好きよ、そう言うオトコ」私が笑うとショウはまたもニヤリと笑った。
「乾杯しましょ」と微笑みかけると
「何に?」とショウも笑った。
「出会いに?」と私が首をかしげると、
「いいね。今夜の出会いに」チンと音がしてグラスが合わさった。私は一口飲むフリをして「おいしいわ。流石ね」と笑うとその演技を信じたのか、「もっと違う酒もある、好きなのを飲むといい」と言ってショウは豪快にブランデーを一気に飲み干した。



