「俺はこの場ではちょっと顔が利くんだよね。どう?二人っきりで一杯。強い酒が飲みたいって言ってたし」
男は天真が見せてくれた所謂VIPルームの閉ざされた扉の奥を目配せ。
まるで爬虫類を思わせる鋭い眼孔。服の上からでも分かる鍛え抜かれた肉体。
間違いない、この男だ。
「素敵な提案ね。でも私、名前も知らない人と呑む気がしないの。私はアヤ。あなたの名前は?」挑発するように笑うと
「俺はショウ。自己紹介は十分だろ?」
「随分強引なのね。その前にお手洗い」
私が席を立とうとすると「洗面所ならVIPルームにもある」とショウと言う男が強引に私の手首を掴む。その仕草はまるで獲物を離さない、と感じを受けた。
「そう、じゃぁ」
私はにっこり微笑んで見せた。
何とか天真と西園寺さんに連絡が取りたかったけれど、この会話たぶん二人は聞いてるだろうし、気づいている筈、
VIPルームと呼ばれる部屋もやはり深紅の扉で、その前にも店に入るときより屈強な男が二人が突っ立っている。
「何だか物騒ね」私は嫌味のように言ってやると
「言ったろ?ここは誰もが入れる場所じゃない。俺が気に入った女しか、ね」
「随分自信があるのね。私を満足させられる?」
ホントは凄く怖い。けれど怖がってちゃダメだ。私は由佳の敵討ちをするんだって決めたんだから。ここで怯んじゃだめよ。
「随分気の強い女だな。でもそこが気に入った」顎をくいと持ち上げられ、爬虫類を思わされるその顔に不気味な笑顔が浮かんだのを見て生唾を飲み込みそうになったが、気丈に振る舞わなくては。
私はわざと男の手から乱暴に顎を振り払うと、
「私は支配されるのが嫌いなの」男を軽く睨んでやった。
男は軽く両手をあげると
「そっか、悪かったな」と急におどけてみせた。
この男―――分からない。
やり辛い。



