私の目的はこの中に居るボス一人。しかし集まって来る男たちは強引に女を虐げるような感じには見えなかった。言っちゃ悪いけれど小者感っての?
もっと目立つ必要があるのかしら。
「仕事は何をしてるの?」と誰かに聞かれ
「仕事はしてないの。パパが仕事は男がするものだ、って。ま、その分お小遣いはたくさんもらってるけど」
一つ間違えたらパパ活しているアバズレに聞こえる話題も、このドレスとメイクのせいか「はー、正真正銘の令嬢ってわけか」とうまく勘違いしてくれる。これは天真がアドバイスくれたことの一つ。この設定だとボスと思われる男の耳に入ったとき目を付けられやすいから、と。やつらの目的はきっとカネにもある。令嬢のあらぬ姿が動画で撮られたらいくらでも払うと踏む、との考えだ。
ホントは産婦人科の受付でこき使われてるけどね、なんて言えない。
『そこいらの男は雑魚どもだ。適当にあしらえ』と天真の声がまたも聞こえてきて、私は退屈なフリ。
「シャンパンには飽きたわ。もっと強いお酒ないの?」とぞんざいに言うと
「俺が持ってこよう」
「いや、俺が」
「俺が」
男達が一斉に立ち上がって、私のお酒を持ってこようとする。今までにない扱いに戸惑ったものの、ここでは私は大金持ちの令嬢。きれいに着飾って普段の私とは別人。
そう、今私は麻生 彩未ではなく”浅田 アヤ”
しかし
急に一人になって、つ……疲れた………
顔には出さないように気を付けていたけれど、あんな風にたくさんの男性に囲まれるなんてこの29年間なかったし。
小さくため息をついていると
「強い酒を求めてるとか?」と始めて見る顔の男が私の隣に腰掛けてきた。白いシャツにグレーシルバーのベスト。ネクタイはそれより少し暗めの同系色の色味をしていた。ブランド物に疎い私でもそれはさっきの男達より何ランクも高いものを身に着けているのが分かった。目がまるで爬虫類を思わせる鋭いもの。それはまるで獲物を狙う目に見えた。
今までの男と違う。
妙に場慣れした感じと女慣れしたこの感じ――――
直観、この男がボスだ。



