あなたが見ていてくれたから

「今日の朝電車いたよね?」


唐突に成瀬亮に聞かれてびっくりした。

まさか見られているとは思ってなかったし

そもそも私のことなんて知らないだろうと思っていた。


「うん。いたけどよく分かったね。私のこと知らないと思ってた」


「知ってるよ。そっちこそ俺のこと知らないでしょ。」


「そんなわけないじゃん。」


「じゃー俺の名前は?」


「成瀬亮でしょ?」


心の中では何度も言ったことがあるが

実際に声に出すのは、初めてなような気がした。