「……はぁ、終わったねぇ。なんか一週間、すごいことばっかりだった気がする。」

奈々子がベッドの上で伸びをする。電話の向こうで雨音も同じようにため息をついた。

「ほんとだよ。選挙とか親衛隊とか……。私、絶対に無理って思ってたけど、湊くんが隣にいてくれたから頑張れた。」

「ふふ。言うと思った。……ねぇ、もう自覚してるでしょ?」

「え、な、なにが?」

「好きってこと。」

沈黙。
電話の向こうで布団をぎゅっと握る音がした。

「……うん。もう隠せないかも。」

奈々子はクスクス笑った。

「なら、あとは伝えるだけじゃん。」

「それができたら苦労しないんだってば!」

雨音の声が少し裏返る。ほんとわかりやすいな、雨音は。

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「いや〜、生徒会役員の一ノ瀬湊様!お疲れ様でございます〜!」

「からかうなって。まだ実感ねーよ。」

二人はオンラインゲームをしながら反省会をしていた。

「でもさ、湊。演説のとき、ちゃんと噛まずに言えてたし、親衛隊の奴らの件も決着ついたし……お前、かっこよかったぞ。」

「……お前に言われてもなぁ。」

「なんだよ照れてんのか〜。お、もしかして雨音ちゃんのために頑張っちゃった?そうなんだろ?そうなんだろ〜?」

「うるせぇよ!てか、お前だってカメラの件で厳重注意されたじゃねーか。」

「まあまあ、それはご愛敬ってことで。……で、誕生日プレゼント、考えた?」

「っ……!なんでお前がそれ知ってんだよ!」

前々から誕生日の計画を実はこっそりとし続けていたのだが、こいつに知られたとは。

「奈々子情報〜!」

「ほんと余計なことばっかするな……」

そう文句を言いながらも、口元は緩んでいた。

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俊介との通話を切った直後。
スマホが再び震えた。画面には「雨音」の文字。

「……もしもし?」

『あ、湊くん?ごめんね、夜遅くに。』

「いや、大丈夫だけど……どうした?」

『なんかね、声が聞きたくなっちゃって。昨日も今日も、今週ずっと気張ってたから、気が抜けたら寂しくなっちゃった。』

「……なんだよそれ。」

『ふふっ。……でも本当にありがとう。生徒会の役員になってくれて。』

「いや、雨音がいたから俺も頑張れた。」

少しの沈黙。
鼓動の音まで聞こえてしまいそうな間。

『……じゃあ、おやすみ。湊くん。』

「お、おう。おやすみ。」

電話が切れたあともしばらく布団の中でごろごろ転がって、眠れそうになかった。