壁の中の彼氏

 こんなに趣味の合う人とは、文芸部にいても出会うことは難しいだろう。
「だから、俺のために作品を書いてくれるかい?」
 そう聞かれると、ノーとはとても言えなかった。
 これからも亜美は男の考えた作品を書いて、男に添削してもらって、そしてそれをコンテストに出すだろう。
 いずれ本という形になって発表される日も来るかもしれない。
 そうなったら、もう一度男に伝えてみよう。
 ペンネームでもいいから、男の名前で出さないかと。
「もちろん。これからも書くよ」
 亜美はそう答えてまた壁をそっとなでたのだった。