壁の中の彼氏

「ペンネームで応募すればいいじゃん。誰でもそうしてる」
「今更ペンネームで参加する必要なんてないだろ? どうしたんだよ?」
 亜美は今までずっと本名で参加してきた。
 だから今度のコンテストでも当然本名を使うつもりだったけれど、今日の帰り道で少し気が変わったのだ。
「だって、やっぱりこの作品はあなたのものだよ」
 ネタも、文章の添削も男がしている。
 それを自分の名前でコンテストに出すことに抵抗を感じた。
 友惠に書き方を教えてほしいと言われて、ロクな答えが出せなかったのが原因だ。
 この作品は自分のものじゃない。
「そんなことない!」