壁の中の彼氏

 やっぱりそうなのかと納得する。
 男は素敵なアイデアを持っているものの、壁の中から出ることができないから執筆するすべを持たないのだ。
そこへ亜美が引っ越してきたことで、「自分の手」を得ることができたと考えたんだろう。
 男と亜美はふたりでひとつになり、ようやく一本の作品を書き上げることができる存在だ。
 どちらかひとりがかけても、作品が形になることはない。
「普通の作家でもいるだろう。ふたりペアになって作品を書いている人たちが」
 亜美は頷いた。
 小説でも漫画でも、アイデアを出す人と書く人が別な場合はよくある。
「俺たちもそうなんだ」
 そう思うとなんだか安心することができた。