壁の中の彼氏

 どうやら男にはあのパソコンの中まで見えているみたいだ。
「そ、そうだよ」
 言葉につっかかりながらも肯定する。
 きっとこれは夢なんだ。
 引っ越し当日に疲れてしまって、私は自分でも気が付かないうちに眠ってしまったんだ。
「どんな作品を書いてるんだ?」
 亜美は今書けているところまでを簡単に男に説明した。
 男は黙って説明を聞いてそれから「なかなかおもしろそうだな」と言ってくれた。
 自分の作品の内容を人に話したのは始めてだったし、それに対して意見をもらったのも初めての経験だった。
 夢だとわかっていながらも亜美は嬉しくなって出窓へ近づいた。