壁の中の彼氏

「いる。この中にいる」
 更に男の声が聞こえてくる。
 それは確かに壁から聞こえてきているけれど、壁の向こう側は外だ。
 しかも亜美の部屋は二階だから、そこに人がいるはずがない。
 ということは、やっぱり壁の中に人がいるということになる。
 ハッと息を飲んで青ざめた。
 まさか壁の中に誰か閉じ込められたんじゃ?
 そう思ったが、すぐにその考えもかき消された。
 壁は人一人が入れるほど厚くない
 男性ならなおさらそこに入ることは不可能だ。
 だけど声だけは確実に聞こえてくる。
「小説を書いているのか?」
 声にそう聞かれて亜美は机の上のパソコンへ視線を向けた。