壁の中の彼氏

「今までは誰にもその才能を見つけてもらえなかったってこと? それもなんか調子のいい話しだよねぇ」
「ちょっと、ハッキリ言いなさいってば!」
 友惠が雑巾の床に投げつけると、優子は声を上げて笑った。
「もしかしてなんだけどさぁ、転校してきてからいい人を見つけたんじゃないかなぁと思っただけ。あ、彼氏とかそういうんじゃないよ? なんていうのかなぁ? 他に書いている人がいるとか?」
 優子の粘ついた笑みが亜美の体を包み込む。
 それはとても気持ちが悪くて、そして抗うことのできない視線だ。
 亜美の心臓はドキドキと早鐘を打ち始めて、 優子を直視できなくなった。
 うつむいて必死にで動揺を隠す。