壁の中の彼氏

それから締め切りまでの毎日は亜美にとって曜日を忘れてしまうくらい目まぐるしかった。
 まず、スイーツを食べて家に戻ってからもネタは浮かんで来ずに一人で苦しむことになった。
 だけど作品のヒントになることがあり、それをきっかけにしてあっという間に作品の流れができあがった。
 そのネタを作品として出せるようになるまでに一週間くらいの時間がかかった。
 どうにか原稿を最後までかきあげた時の開放感と爽快感は今でも忘れられない。
「やったよ、最後まで書けたよ!」
 部室で友惠にそう告げると、一緒になって喜んでくれた。
「短編を一本完成させたって、プロにはなれないでしょ」
 優子が気分を害するようなことを言ってきたけれど、あまり気にならなかった。
 自分は少しだけ前進できたんだという気持ちの方が、ずっと強く大きく、全身を包み込んでいたからだ。