「一年、足が止まっているぞ」

笹波先生の声がビシッと響く。

一年生対二年生の練習試合。点差はみるみる広まっていくばかり。
勝つのは厳しいってわかっているけど、もうちょっと踏ん張りたいところ。

一年のエースである美優の目がきらりと光る。

美優はまだこの試合を諦めていない。
だったら私も。もう一踏ん張り頑張ってみよう。

先輩のマークを何とか交わす。私はオフェンスが上手くないと思われている。
シュートも入らないしドリブルも上手くない。だけど私にだってできることはある。

「美優、パスちょうだい!」

先輩二人にマークされている美優に声を出す。

珍しくパスを要求した私に花村さんが驚いているのが見えた。
美優のパスをキャッチする。

入部してみて、私はバスケがあまり向いてないなと思うことが多かった。
美優は経験者だから上手い。
花村さんたちは未経験者だけど運動神経が高いのかすぐに上達して自信を持っている。
それに比べて私は上達のスピードが遅い。

試合には出たい。だけどできることがないから邪魔をしないようにするしかないと思ってた。

だけどね、そうじゃないんだ。

そんなことずっと続けてたらどんどんバスケがつまらなくなるし、頑張ろうって気持ちにもならない。

私だって始めたからにはバスケを頑張りたい。
私は私にできることをする。

パスをもらってゴールに向かってドリブルをする。
さすがにノーマークでシュートとまでは行かずディフェンスが一人ついてきた。

このままシュートを打ってもブロックされてしまう。

その時、ノーマークになった美優が視界に入った。

よし、今だ! 美優に向かってノーバウンドでパスを出す。

勢いよく向かったボールを受け取り、美優はすぐさまシュートを放った。
美優のスリーポイントシュートが見事にゴールネットを揺らした。

やった! 私もオフェンスに参加できたんだ。

「ナイスパス、真澄」

「美優のシュートのおかげだよ」

すぐに先輩たちは攻めてくる。ここはしっかり守らないと。

バスケはすごく体力を使うスポーツだ。
楽しいことばかりじゃないし嫌になることもある。

他の部活を選んだら……なんてことを考えたこともある。

もっと自分に向いているスポーツがあるかもしれない。
けどたった一つの選択だけが人生の正解じゃない。

何度も何度も選択肢を突きつけられ、その時にどれを自分が選ぶかが大切なんだ。
夢で見た二年生の私は後輩にも舐められていた。

そんな風にはなりたくない。
だったら今からできることをやっていかなきゃ。