次の日の朝。教室に入ると、花村さん達女子バスケ部のグループがキッとした目で私を見てきた。
まるで標的でも見つけたかのような目をしている。
私、何かしちゃったのかな。
「竹口さんって本当はそうだったんだ」
花村さんが意地悪な魔女のような声を絞り出すようにして言った。
「何のこと言っているの?」
「とぼけたって無駄だよ。もうみんな知っているんだから」
花村さんの言っていることが本当に理解できない。
「何の話しているのかわからないけど、きっと何かの勘違いじゃないかな」
きっと美優ならわかってくれるはず。
そう思って美優の方を見たんだけど。
「真澄のこと信じてたのに。ずっと嘘をついてたんだね」
美優まで私のことを睨みつけるように見ていた。
きらりと光るように潤んだ目をしながら。
私が美優に嘘を?
そんなのきっと何かの間違いに決まっている。
「竹口さんって伊崎君のことが好きなんでしょ」
花村さんの一言が教室中の空気をぶるっと震わせる。
みんなの視線が私に向かっているのがわかる。
なんで? どうしてそんなことになっているの?
「昨日テニス部でイチャイチャしてたんでしょ? みんなに内緒で伊崎君と二人で出かけて、そのことを部活中に自慢するなんて」
「そ、そんなことしてない」
「へー、じゃあ伊崎君に聞いてみよっかな」
うっ。言葉が出ない。
コウと二人で出かけたのは本当だ。
でも、それは……。
「コウとはただテニスの特訓をしただけで」
「テニスするだけなら、他の人を誘ってもよかったよね」
「それはそうだけど」
「竹口さんが伊崎君と二人がいいから誘わなかったんでしょ」
久しぶりにコウと二人で遊べることに喜んでいる自分がいた。
だから他の人を誘うなんて考えもしなかった。
でも、それくらいのことで……。
「それが、何か悪いっていうの?」
次の瞬間、花村さん達がいやに甲高い声を出して笑い出した。
「何か悪かったですって? そりゃそうでしょ。他の人が伊崎君のことを好きってわかってたのに、みんなを欺いて二人きりで遊んだ。みんなを騙しったことでしょ」
そんなつもりはなかった。
それに他の人がコウのことを好きだなんて。
薄々そうかなっとは思ってたけど、そんなの私に言わないでよ。
「伊崎君のことちょっと昔から知っているからってべったりくっついて部活まで一緒にするなんて。伊崎君のことが好きじゃないって言ってたのも嘘なんでしょ?」
ドキッと心臓が音を立てる。
コウのことはずっと腐れ縁だと思ってた。
好きとか、彼氏になってほしいとかそんなこと考えてなかった。
「そ、それは……」
「いつまで嘘をついて他の女子のことを傷つけようとするの?」
クラス中の視線が私に向いている。
私、コウのこと好きなのかな?
コウが他の女子と二人で遊びに行く。それを想像したらすごく嫌な気持ちになるけど。
それがコウを好きってことになるのかな。
「真澄はずっと私に嘘をついてたんだ」
美優が真っ直ぐに私を見る。
美優の目がさっきまでとは打って変わって黒く、濁って見えた。
「真澄は伊崎君のことただの腐れ縁って言ってたのに」
もしかして、美優もコウのことが好きだったんだ。
美優の気持ちに全然気がついてなかった。
いや、本当は美優がコウのことをどう思っているか知ってたような気がする。
それなのに、私は。
このままだったらもう二度と美優とは友達に戻れないかもしれない。
そんなの嫌だ。美優は私の友達だ。
美優と友達でいられないなんて、そんなの嫌だ。
「べ、別にコウのことは好きじゃないよ」
美優に向かって、クラス中の人に聞こえるように大きな声を出す。
「本当にコウとはただの腐れ縁なだけだよ。部活まで一緒で本当は嫌なくらいだしさ」
「そうなの」
コウのことを悪く言いたくない。
でも、まだコウは学校に来ていない。
今はこうやって言うしか方法はない。
「そうだよ。特訓だって私のことテニスが一番下手だから誘われただけだし。ずっと弱いって言われているみたいでもう二度と特訓なんかしたくないと思ったよ」
「なーんだ、そうだったんだ」
急に手のひらをころっとひっくり返したように花村さんが猫撫で声を出す。
「本当にただの腐れ縁。いい加減、クラスや部活が離れ離れになりたいよ」
そう言った瞬間。コウが教室のドアから顔を出した。
「コウ……」
「俺のことそんな風に思ってたんだ」
今の全部、コウに聞かれてた。
でも、ここじゃ言い訳なんてできない。
「竹口さんもいくら腐れ縁だからってそこまで言わなくてもいいじゃん」
甘ったるいベタついた声で花村さんが言ってくる。
違う。これは花村さんたちに誘導されたからで。
「真澄の思っていることはよくわかった」
それだけ言うと、コウは黙って自分の席に座った。
美優が私を見ているのがわかる。
けど美優の目を見るのが怖くて、誰とも目を合わせないで自分の席に座った。
まるで標的でも見つけたかのような目をしている。
私、何かしちゃったのかな。
「竹口さんって本当はそうだったんだ」
花村さんが意地悪な魔女のような声を絞り出すようにして言った。
「何のこと言っているの?」
「とぼけたって無駄だよ。もうみんな知っているんだから」
花村さんの言っていることが本当に理解できない。
「何の話しているのかわからないけど、きっと何かの勘違いじゃないかな」
きっと美優ならわかってくれるはず。
そう思って美優の方を見たんだけど。
「真澄のこと信じてたのに。ずっと嘘をついてたんだね」
美優まで私のことを睨みつけるように見ていた。
きらりと光るように潤んだ目をしながら。
私が美優に嘘を?
そんなのきっと何かの間違いに決まっている。
「竹口さんって伊崎君のことが好きなんでしょ」
花村さんの一言が教室中の空気をぶるっと震わせる。
みんなの視線が私に向かっているのがわかる。
なんで? どうしてそんなことになっているの?
「昨日テニス部でイチャイチャしてたんでしょ? みんなに内緒で伊崎君と二人で出かけて、そのことを部活中に自慢するなんて」
「そ、そんなことしてない」
「へー、じゃあ伊崎君に聞いてみよっかな」
うっ。言葉が出ない。
コウと二人で出かけたのは本当だ。
でも、それは……。
「コウとはただテニスの特訓をしただけで」
「テニスするだけなら、他の人を誘ってもよかったよね」
「それはそうだけど」
「竹口さんが伊崎君と二人がいいから誘わなかったんでしょ」
久しぶりにコウと二人で遊べることに喜んでいる自分がいた。
だから他の人を誘うなんて考えもしなかった。
でも、それくらいのことで……。
「それが、何か悪いっていうの?」
次の瞬間、花村さん達がいやに甲高い声を出して笑い出した。
「何か悪かったですって? そりゃそうでしょ。他の人が伊崎君のことを好きってわかってたのに、みんなを欺いて二人きりで遊んだ。みんなを騙しったことでしょ」
そんなつもりはなかった。
それに他の人がコウのことを好きだなんて。
薄々そうかなっとは思ってたけど、そんなの私に言わないでよ。
「伊崎君のことちょっと昔から知っているからってべったりくっついて部活まで一緒にするなんて。伊崎君のことが好きじゃないって言ってたのも嘘なんでしょ?」
ドキッと心臓が音を立てる。
コウのことはずっと腐れ縁だと思ってた。
好きとか、彼氏になってほしいとかそんなこと考えてなかった。
「そ、それは……」
「いつまで嘘をついて他の女子のことを傷つけようとするの?」
クラス中の視線が私に向いている。
私、コウのこと好きなのかな?
コウが他の女子と二人で遊びに行く。それを想像したらすごく嫌な気持ちになるけど。
それがコウを好きってことになるのかな。
「真澄はずっと私に嘘をついてたんだ」
美優が真っ直ぐに私を見る。
美優の目がさっきまでとは打って変わって黒く、濁って見えた。
「真澄は伊崎君のことただの腐れ縁って言ってたのに」
もしかして、美優もコウのことが好きだったんだ。
美優の気持ちに全然気がついてなかった。
いや、本当は美優がコウのことをどう思っているか知ってたような気がする。
それなのに、私は。
このままだったらもう二度と美優とは友達に戻れないかもしれない。
そんなの嫌だ。美優は私の友達だ。
美優と友達でいられないなんて、そんなの嫌だ。
「べ、別にコウのことは好きじゃないよ」
美優に向かって、クラス中の人に聞こえるように大きな声を出す。
「本当にコウとはただの腐れ縁なだけだよ。部活まで一緒で本当は嫌なくらいだしさ」
「そうなの」
コウのことを悪く言いたくない。
でも、まだコウは学校に来ていない。
今はこうやって言うしか方法はない。
「そうだよ。特訓だって私のことテニスが一番下手だから誘われただけだし。ずっと弱いって言われているみたいでもう二度と特訓なんかしたくないと思ったよ」
「なーんだ、そうだったんだ」
急に手のひらをころっとひっくり返したように花村さんが猫撫で声を出す。
「本当にただの腐れ縁。いい加減、クラスや部活が離れ離れになりたいよ」
そう言った瞬間。コウが教室のドアから顔を出した。
「コウ……」
「俺のことそんな風に思ってたんだ」
今の全部、コウに聞かれてた。
でも、ここじゃ言い訳なんてできない。
「竹口さんもいくら腐れ縁だからってそこまで言わなくてもいいじゃん」
甘ったるいベタついた声で花村さんが言ってくる。
違う。これは花村さんたちに誘導されたからで。
「真澄の思っていることはよくわかった」
それだけ言うと、コウは黙って自分の席に座った。
美優が私を見ているのがわかる。
けど美優の目を見るのが怖くて、誰とも目を合わせないで自分の席に座った。


