コウと特訓をしてから、テニスの調子がだいぶよくなってきた。
最近は部活の練習も楽しくなってきたんだよね。
部活内の1ポイントマッチの勝率も上がってきたし。
これも全部、コウが私にアドバイスをくれたおかげだな。
「コウ、この前はありがとうね」
「この前?」
「土曜日、部活の後に一緒にテニスの練習してくれたしょ。あれから調子よくなってきたんだ」
「ああ、あれのことか。あんなんでよければいつでも付き合うぞ」
コウに「付き合う」って言われただけでドキッとしてしまう。
コウは変な意味で言ったわけじゃないのに。
「土曜日、二人でどこかに行ってたの?」
後ろから急に聞こえた声にぞくっとする。
振り返ると市川さんが私とコウを睨むように見ていた。
そういえば市川さんが土曜日、コウのことを遊びに誘ってたのをすっかり忘れてた。
「ずるいじゃん、二人だけで遊びに出掛けて」
「別に遊びに行ったわけじゃ……」
市川さんからの問いかけに思わずたじたじしてしまう。
「真澄とテニスの特訓をしただけだよ」
コウの声がいつもより低く素っ気ないように聞こえた。
「えー、それならそう言ってくれればよかったのに。私も行きたかったな」
「部活の後にテニスするの嫌かなと思ってさ。今度は市川さんも誘うよ」
「よーし、やったー」
市川さん、すごく嬉しそうにはしゃいでいる。
本当はコウも私よりも市川さんと二人で練習した方が楽しかったのかな。
「約束だからね。伊崎君忘れないでよ」
スキップをしながら市川さんがその場を離れる。
私がじーっとコウを見ていると「何だよ」ってぶっきらぼうに言ってきた。
「別に。コウって市川さんとも約束するんだなーって」
「それは……。そりゃ、ああ言わないといけないだろ」
同じチームメイトなんだからさってコウが付け加える。
やっぱり、私のことだってチームメイトだから心配してくれたんだよね。
「そうですか」
私ったら何を期待してたんだろう。
コウと二人で遊んだり出掛けたりなんて何回もしたことがあるのに。
私が一番、一年でテニスが上手くいってなかったから声をかけてくれただけ。
市川さんが誘ってもコウはきっと二人で特訓に行くんだろうな。
そんなことを想像したら急に胸が苦しくなってきた。
私、どうしちゃったんだろう?
コウのこと考えてたらモヤモヤしてきた。
これじゃあテニスに集中できないよ。
せっかくコウが私のためにテニスの特訓に付き合ってくれたのに。
「あれ、竹口さん。今日調子悪いの?」
市川さんに言われてハッとする。
まずい、ちょっとあからさま過ぎたかな。
「ごめん、色々考えてて」
「そうなの? せっかく伊崎君が竹口さんのために二人で特別特訓してくれたのに」
市川さんが他の部員にも聞こえるくらい大きな声を出す。
ちょっと、みんなの前でそんなこと言わないでよ……。
スッと市川さんが私に近づいてくる。
「わざとテニスを下手なふりして、また伊崎君を誘おうとしてるの?」
市川さんの冷たい声に思わず背筋が凍りそうになる。
「そういうわけじゃないけど」
市川さんはコウのことが好きなんだ。
そして、私のことを敵だと思っているんだ。
「そういうあざといアピール、やめた方がいいと思うよ?」
他の一年女子も市川さんと同じような目で私を見ている。
もしかして私テニス部の一年女子を全員敵に回しているの?
「おーい、何かあったのか?」
コウがこっちの異変に気がついてやってくる。
「別に何でもないよ。竹口さんがちょっと疲れてただけ」
キラッキラの笑顔で市川さんがコウに返す。
私の額から流れる汗はまだまだ止まりそうになかった。
最近は部活の練習も楽しくなってきたんだよね。
部活内の1ポイントマッチの勝率も上がってきたし。
これも全部、コウが私にアドバイスをくれたおかげだな。
「コウ、この前はありがとうね」
「この前?」
「土曜日、部活の後に一緒にテニスの練習してくれたしょ。あれから調子よくなってきたんだ」
「ああ、あれのことか。あんなんでよければいつでも付き合うぞ」
コウに「付き合う」って言われただけでドキッとしてしまう。
コウは変な意味で言ったわけじゃないのに。
「土曜日、二人でどこかに行ってたの?」
後ろから急に聞こえた声にぞくっとする。
振り返ると市川さんが私とコウを睨むように見ていた。
そういえば市川さんが土曜日、コウのことを遊びに誘ってたのをすっかり忘れてた。
「ずるいじゃん、二人だけで遊びに出掛けて」
「別に遊びに行ったわけじゃ……」
市川さんからの問いかけに思わずたじたじしてしまう。
「真澄とテニスの特訓をしただけだよ」
コウの声がいつもより低く素っ気ないように聞こえた。
「えー、それならそう言ってくれればよかったのに。私も行きたかったな」
「部活の後にテニスするの嫌かなと思ってさ。今度は市川さんも誘うよ」
「よーし、やったー」
市川さん、すごく嬉しそうにはしゃいでいる。
本当はコウも私よりも市川さんと二人で練習した方が楽しかったのかな。
「約束だからね。伊崎君忘れないでよ」
スキップをしながら市川さんがその場を離れる。
私がじーっとコウを見ていると「何だよ」ってぶっきらぼうに言ってきた。
「別に。コウって市川さんとも約束するんだなーって」
「それは……。そりゃ、ああ言わないといけないだろ」
同じチームメイトなんだからさってコウが付け加える。
やっぱり、私のことだってチームメイトだから心配してくれたんだよね。
「そうですか」
私ったら何を期待してたんだろう。
コウと二人で遊んだり出掛けたりなんて何回もしたことがあるのに。
私が一番、一年でテニスが上手くいってなかったから声をかけてくれただけ。
市川さんが誘ってもコウはきっと二人で特訓に行くんだろうな。
そんなことを想像したら急に胸が苦しくなってきた。
私、どうしちゃったんだろう?
コウのこと考えてたらモヤモヤしてきた。
これじゃあテニスに集中できないよ。
せっかくコウが私のためにテニスの特訓に付き合ってくれたのに。
「あれ、竹口さん。今日調子悪いの?」
市川さんに言われてハッとする。
まずい、ちょっとあからさま過ぎたかな。
「ごめん、色々考えてて」
「そうなの? せっかく伊崎君が竹口さんのために二人で特別特訓してくれたのに」
市川さんが他の部員にも聞こえるくらい大きな声を出す。
ちょっと、みんなの前でそんなこと言わないでよ……。
スッと市川さんが私に近づいてくる。
「わざとテニスを下手なふりして、また伊崎君を誘おうとしてるの?」
市川さんの冷たい声に思わず背筋が凍りそうになる。
「そういうわけじゃないけど」
市川さんはコウのことが好きなんだ。
そして、私のことを敵だと思っているんだ。
「そういうあざといアピール、やめた方がいいと思うよ?」
他の一年女子も市川さんと同じような目で私を見ている。
もしかして私テニス部の一年女子を全員敵に回しているの?
「おーい、何かあったのか?」
コウがこっちの異変に気がついてやってくる。
「別に何でもないよ。竹口さんがちょっと疲れてただけ」
キラッキラの笑顔で市川さんがコウに返す。
私の額から流れる汗はまだまだ止まりそうになかった。


