練習前の外周をしている時は気分が上がってたんだけど。
いざテニスの練習が始まるとこれまた全然調子がでないんだよね。

市川さん達は昨日の練習試合に勝って弾みをつけている。
それに比べて私はてんでモチベーションが上がらない。

「あくまでも昨日の試合は練習試合だからな。自分で試合を振り返り何が良くて、何が悪かったか。それを考えて練習しないと意味がないぞ」

西崎先輩が一年生全員に向かって強く言う。
やっぱり先輩の言葉は重い。

そう言っても負けた私にいいところなんてあるんですかね。
負けた理由って言ってもほとんど私のミスの失点だしな。

「真澄、練習試合で負けた理由わかってないだろ?」

部活の帰り道、コウが声をかけてきた。
先に学校を出ていた私を、わざわざ追いかけてくれてまで。

「ま、まあ、なんとなくはわかるけど」

「それ、わかってねーやつの言う台詞だよ」

怒っているわけじゃなく、笑いながらコウが言った。

「なあ、今度の土曜日忙しいか?」

「別に予定はないけど……」

「じゃ、俺と一緒にテニスの特訓だ」

何だろうこの展開。

「俺がみっちり真澄にテニスを教えるよ」

そう言ってコウが笑う。
私は勢いに押されて、「うん」と頷いていた。

「それまでの練習で自分が負けた理由ちゃんと探すんだぞ」

コウが私を見ながら笑っている。
その笑顔はいつもの悪戯っぽい笑顔じゃない。
爽やかなスポーツマンの笑顔だ。

コウと二人で休みの日にお出かけをするのか。
って私ったら何考えているの?

心臓がドキドキする。

隣にいるコウの姿が一段とかっこよく見えた。