練習試合の次の日。教室のドアを開けるといつも通りの光景が広がっていた。
一日経ってもまだ試合に負けて悔しさは残っている。
そのせいかいつにも増して天気がいいのにいつもよりもちょっとばかり気が重い。
他の人にとっては何も変わらない、ただの月曜日。
コウの方をチラリと見る。
コウは私から顔を背けるように窓の方を見ていた。
一瞬、目が合ったように思ったのは私の気のせいかな?
「おはよう、真澄」
美優の声が聞こえてすぐに我に返る。
「昨日の練習試合、すごかったんだよ」
花村さんの一言に体がピクッと無意識に反応する。
しばらく練習試合って言葉、聞きたくないかも。
「先輩たちとは別に一年生同士のチームでも試合したんだけどさ、美優が大活躍だったんだよね」
「もう、それは言い過ぎだよ」
そう言いながら美優は嬉しそうに笑っていた。
「いやマジで美優うますぎ。一人で三十点くらい決めてるじゃん」
「そうだけど、それはみんなのアシストがいいおかげだよ」
バスケで三十点と言われてもいまいちピンとこない。
「竹口さんにも見せてあげたかったな。きっとびっくりするよ」
「ふーん、そうなんだ」
「私は昔からバスケをやってただけだから。すぐにみんなに抜かされちゃうよ」
「そんなことないって。美優はうちらのエースだからさ」
女子バスケ部のみんなで盛り上がっている話の輪の中にいまいちうまく入れない。
美優の活躍を聞いて嬉しいのに、なんで素直に喜べないんだろう。
「あれ、竹口さん美優が活躍しても嬉しくないの?」
花村さんの一言にドキッとする。
「え? そんなことないよ。すごく嬉しいよ」
「話が上の空に見えたけど」
女子バスケ部の私を見る目が少し厳しい。
「真澄にバスケの話してもよくわからないもんね」
美優が寂しそうな表情を浮かべて小さく呟いた。
「そっか、ごめんね。竹口さんにとってバスケは関係ないもんね」
「違う、そういうわけじゃ……」
まずい。話がどんどんおかしな方向に進んでいる。
「でも昔からの親友が活躍した話なら、もうちょっと聞いてあげると思うけどな」
花村さんの言葉がずきりと胸に突き刺さる。
声音はまったりしているのに、鋭く心に響いてくる。
「本当にそういうわけじゃないの。美優のことは今でも大事な友達だと思っている」
「じゃあ、どうして大事な友達のことなのに、どうでもよさそうな顔しているの?」
「それは……」
美優のことがどうでもいいわけじゃない。
けど、私は練習試合でうまくいかなかった。
それなのに種目が違うとはいえ友達の活躍した話を聞くのはちょっとしんどいよ。
「竹口さんはテニスで一生懸命だもんね。余計なこと話しても迷惑だよね」
花村さんの目が睨みつけるように細くなる。
「今までは美優と仲良かったのかもしれない。けど、美優の活躍を喜べない人のことを私たちは友達だと思えない」
花村さんたち女子バスケ部のメンバーが私を追い出すように睨んでくる。
この人たちは私のことをよく思っていないんだ。
「そっか、ごめんね」
それだけ言い残すと美優の顔も見ずに自分の席に戻った。
すぐに花村さんたちの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
私のことなんてもうすっかりいなくなったみたい。
美優も私がいなくてもきっと困ることなんてないんだろうな。
もしも私がバスケ部に入っていたら。
それか、もしも私が部活で活躍をしていたら。
こんなことにはならなかったのかな。
美優が前に話していたドラマのことを思い出した。
そして、現実にもしもなんてないことに気がついてがっかりした。
一日経ってもまだ試合に負けて悔しさは残っている。
そのせいかいつにも増して天気がいいのにいつもよりもちょっとばかり気が重い。
他の人にとっては何も変わらない、ただの月曜日。
コウの方をチラリと見る。
コウは私から顔を背けるように窓の方を見ていた。
一瞬、目が合ったように思ったのは私の気のせいかな?
「おはよう、真澄」
美優の声が聞こえてすぐに我に返る。
「昨日の練習試合、すごかったんだよ」
花村さんの一言に体がピクッと無意識に反応する。
しばらく練習試合って言葉、聞きたくないかも。
「先輩たちとは別に一年生同士のチームでも試合したんだけどさ、美優が大活躍だったんだよね」
「もう、それは言い過ぎだよ」
そう言いながら美優は嬉しそうに笑っていた。
「いやマジで美優うますぎ。一人で三十点くらい決めてるじゃん」
「そうだけど、それはみんなのアシストがいいおかげだよ」
バスケで三十点と言われてもいまいちピンとこない。
「竹口さんにも見せてあげたかったな。きっとびっくりするよ」
「ふーん、そうなんだ」
「私は昔からバスケをやってただけだから。すぐにみんなに抜かされちゃうよ」
「そんなことないって。美優はうちらのエースだからさ」
女子バスケ部のみんなで盛り上がっている話の輪の中にいまいちうまく入れない。
美優の活躍を聞いて嬉しいのに、なんで素直に喜べないんだろう。
「あれ、竹口さん美優が活躍しても嬉しくないの?」
花村さんの一言にドキッとする。
「え? そんなことないよ。すごく嬉しいよ」
「話が上の空に見えたけど」
女子バスケ部の私を見る目が少し厳しい。
「真澄にバスケの話してもよくわからないもんね」
美優が寂しそうな表情を浮かべて小さく呟いた。
「そっか、ごめんね。竹口さんにとってバスケは関係ないもんね」
「違う、そういうわけじゃ……」
まずい。話がどんどんおかしな方向に進んでいる。
「でも昔からの親友が活躍した話なら、もうちょっと聞いてあげると思うけどな」
花村さんの言葉がずきりと胸に突き刺さる。
声音はまったりしているのに、鋭く心に響いてくる。
「本当にそういうわけじゃないの。美優のことは今でも大事な友達だと思っている」
「じゃあ、どうして大事な友達のことなのに、どうでもよさそうな顔しているの?」
「それは……」
美優のことがどうでもいいわけじゃない。
けど、私は練習試合でうまくいかなかった。
それなのに種目が違うとはいえ友達の活躍した話を聞くのはちょっとしんどいよ。
「竹口さんはテニスで一生懸命だもんね。余計なこと話しても迷惑だよね」
花村さんの目が睨みつけるように細くなる。
「今までは美優と仲良かったのかもしれない。けど、美優の活躍を喜べない人のことを私たちは友達だと思えない」
花村さんたち女子バスケ部のメンバーが私を追い出すように睨んでくる。
この人たちは私のことをよく思っていないんだ。
「そっか、ごめんね」
それだけ言い残すと美優の顔も見ずに自分の席に戻った。
すぐに花村さんたちの楽しそうな笑い声が聞こえてくる。
私のことなんてもうすっかりいなくなったみたい。
美優も私がいなくてもきっと困ることなんてないんだろうな。
もしも私がバスケ部に入っていたら。
それか、もしも私が部活で活躍をしていたら。
こんなことにはならなかったのかな。
美優が前に話していたドラマのことを思い出した。
そして、現実にもしもなんてないことに気がついてがっかりした。


