「うわー、すっごい!」
電車を降りてから歩いて十五分。試合会場のテニスコートに到着!
見渡す限りテニスコートがいっぱい。
いつも見る学校や近くの公園のコートと比べたらその差がすごいわかる。
「ここはコートが十面あるからな。だから一年生たちも試合ができるってわけだ」
西崎先輩が初めてくる私たちに教えてくれている。
確か、公式戦もここで試合をすることがあるんだよね。
「アップを済ませておけよ。すぐに試合が始まるからな」
すでに他の中学から来た人たちがランニングをしたり、コートを使って練習をしている。
もうすぐ、私もここのコートで試合をするんだ。
よし、頑張るぞ。
今日の練習試合は私の学校を含めて全部で四校が集まっていた。
試合相手はくじで決められているみたい。私は四番コートの八試合目だ。
「真澄、何試合目だった?」
ランニングから戻ってきたコウが私に向かってきた。
額にほんのり流れている汗が太陽の光に反射してキラキラして見える。
「八試合目。コウは?」
「俺は五試合目。お互いの試合を見合いっこできるな」
コウの何気ない一言に思わずドキッとする。
私の試合をしているところ、コウに見られるんだ。
そう思ったら何だか心臓のバクバクが余計早まってきた。
「どうした? 顔赤くなっているぞ」
嘘、何で私顔が赤くなっているの?
「別に、何でもない。暑いだけ」
「水分補給、忘れるなよ。ハンバーガーの食べ過ぎで他の人よりも水分減っているんだから」
そう言い残してコウはまたランニングに向かった。
コウったら優しいんだか、意地悪なんだか。
でも私のことを気にかけてくれているよね。
私ったらコウとばっかり話している。
他の一年女子はクラスが同じだったりで部活以外でも仲がいいみたいだし。
私だけ一人蚊帳の外みたい。
アップを終えた一年女子が集まっていた。
私もあの中に入ってみようかな。
「ねえ、みんなは何試合目だった?」
思い切って私は女子グループの中に話しかけに行った。
嫌な顔とかされたらどうしようとか思ってたけど、みんな笑顔で迎え入れてくれた。
「私は七試合目」
「私は八だな」
みんな結構同じくらいのタイミングで試合をしているんだな。
「私は六試合目だよ」
市川さんが少し照れたように笑っていた。
「この中で一番早いの、私だよね」
「みんなで応援に行くからね」
市川さんを中心にみんなが盛り上がっている。
人当たりも良く、練習にも前向きだから市川さんは人気者だ。
初試合で市川さんに負けてから、なんとなく苦手意識を持っているんだよな。
「私も市川さんの試合、見に行くね」
「ありがとう。でもそんなに言われたら緊張しちゃうよ」
いじらしく笑う市川さんが可愛く見えた。
「先輩たちの試合、始まるんじゃない?」
「西崎先輩、一試合目だったもんね」
先輩たちが他校との試合を見るのも初めてだ。
二番コートに向かうと、ちょうど西崎先輩がコートに入っていた。
相手の選手も三年生だ。
試合が始まった。
見ているだけなのに、私まで緊張してくるよ。
最初は西崎先輩のサーブ。
ボールを上げると最高到達点に達したところで思い切りラケットを振りかぶった。
豪速球が相手のコートを狙い打つ。
見事なサービスエースが決まった。
「フィフティーン、ラブ」
すごい。これが先輩の本気の実力なんだ。
あまりに見事なプレイを見て、思わずため息が出ちゃうよ。
「西崎先輩、すごすぎるぜ」
コウも思わず、びびっている。
西崎先輩がバンバン、ポイントを取っていく。
毎回サービスエースは打てないけど、相手のボールを確実に返していく。
あっさりとワンセットを取り、相手のサーブの番。
西崎先輩はどんなボールにも食いついてしっかりと返していく。
よし、またワンセット取った。
「すげえ、ブレイクしたよ」
ブレイクとはサーブを打たれる側がセットを取ることだ。
テニスはサーブを打つ方にアドバンテージがある。
ブレイクを取るってすごく大変なことなのに、西崎先輩は軽々とやってしまう。
その後も西崎先輩はポイントを順調に重ねていく。
今日の試合は三セットマッチだ。ブレイクを決めた西崎先輩はそのまま自分のサーブのセットも取り、勝利を決めた。
全コート同時に始まった一試合目で、西崎先輩が一番最初に勝利を決めた。
「西崎先輩、カッコよかったね」
西崎先輩の試合を見てテンションが上がってしまった。
あれがテニスの試合なんだ。
すごくエキサイティングで、見事なプレイに目を奪われてしまった。
そして、何よりも西崎先輩は楽しそうにテニスをしていた。
隣にいるコウを見る。
さっきコウはキラキラした目で西崎先輩のプレイを見つめていた。
そっか、コウは西崎先輩のプレイに憧れているんだ。
私はどうだろう?
テニスのことがすごく好きかって聞かれたら、素直にうんって言えない。
テニスが好きならもっと上手くなっているはずだもん。
ふと美優が話していたパラレルワールドのドラマを思い出した。
もしパラレルワールドの私がいたら、テニス部に入っているのかな?
美優と同じバスケ部に入ったり、部活見学で楽しそうだったバドミントン部に入っていた可能性だってあるんだよね。
なんてね。そんなIFストーリー、あるわけないのに考えちゃう。
今、私の目の前にあるのはあの時選んだもしもじゃない。
それを選ばなかった現実だけだ。
「何ぼーっとしているんだよ」
軽くコツンとコウが肩を叩く。
「俺の試合が始まったら、真澄も見てくれよ」
「うん、頑張って」
そう言ってコウは晴れ渡った笑顔を向けて試合のあるコートに向かって走り出した。
コウはテニスに素直で真っ直ぐだ。
そんなコウのことがちょっぴりかっこいいなって思った。
電車を降りてから歩いて十五分。試合会場のテニスコートに到着!
見渡す限りテニスコートがいっぱい。
いつも見る学校や近くの公園のコートと比べたらその差がすごいわかる。
「ここはコートが十面あるからな。だから一年生たちも試合ができるってわけだ」
西崎先輩が初めてくる私たちに教えてくれている。
確か、公式戦もここで試合をすることがあるんだよね。
「アップを済ませておけよ。すぐに試合が始まるからな」
すでに他の中学から来た人たちがランニングをしたり、コートを使って練習をしている。
もうすぐ、私もここのコートで試合をするんだ。
よし、頑張るぞ。
今日の練習試合は私の学校を含めて全部で四校が集まっていた。
試合相手はくじで決められているみたい。私は四番コートの八試合目だ。
「真澄、何試合目だった?」
ランニングから戻ってきたコウが私に向かってきた。
額にほんのり流れている汗が太陽の光に反射してキラキラして見える。
「八試合目。コウは?」
「俺は五試合目。お互いの試合を見合いっこできるな」
コウの何気ない一言に思わずドキッとする。
私の試合をしているところ、コウに見られるんだ。
そう思ったら何だか心臓のバクバクが余計早まってきた。
「どうした? 顔赤くなっているぞ」
嘘、何で私顔が赤くなっているの?
「別に、何でもない。暑いだけ」
「水分補給、忘れるなよ。ハンバーガーの食べ過ぎで他の人よりも水分減っているんだから」
そう言い残してコウはまたランニングに向かった。
コウったら優しいんだか、意地悪なんだか。
でも私のことを気にかけてくれているよね。
私ったらコウとばっかり話している。
他の一年女子はクラスが同じだったりで部活以外でも仲がいいみたいだし。
私だけ一人蚊帳の外みたい。
アップを終えた一年女子が集まっていた。
私もあの中に入ってみようかな。
「ねえ、みんなは何試合目だった?」
思い切って私は女子グループの中に話しかけに行った。
嫌な顔とかされたらどうしようとか思ってたけど、みんな笑顔で迎え入れてくれた。
「私は七試合目」
「私は八だな」
みんな結構同じくらいのタイミングで試合をしているんだな。
「私は六試合目だよ」
市川さんが少し照れたように笑っていた。
「この中で一番早いの、私だよね」
「みんなで応援に行くからね」
市川さんを中心にみんなが盛り上がっている。
人当たりも良く、練習にも前向きだから市川さんは人気者だ。
初試合で市川さんに負けてから、なんとなく苦手意識を持っているんだよな。
「私も市川さんの試合、見に行くね」
「ありがとう。でもそんなに言われたら緊張しちゃうよ」
いじらしく笑う市川さんが可愛く見えた。
「先輩たちの試合、始まるんじゃない?」
「西崎先輩、一試合目だったもんね」
先輩たちが他校との試合を見るのも初めてだ。
二番コートに向かうと、ちょうど西崎先輩がコートに入っていた。
相手の選手も三年生だ。
試合が始まった。
見ているだけなのに、私まで緊張してくるよ。
最初は西崎先輩のサーブ。
ボールを上げると最高到達点に達したところで思い切りラケットを振りかぶった。
豪速球が相手のコートを狙い打つ。
見事なサービスエースが決まった。
「フィフティーン、ラブ」
すごい。これが先輩の本気の実力なんだ。
あまりに見事なプレイを見て、思わずため息が出ちゃうよ。
「西崎先輩、すごすぎるぜ」
コウも思わず、びびっている。
西崎先輩がバンバン、ポイントを取っていく。
毎回サービスエースは打てないけど、相手のボールを確実に返していく。
あっさりとワンセットを取り、相手のサーブの番。
西崎先輩はどんなボールにも食いついてしっかりと返していく。
よし、またワンセット取った。
「すげえ、ブレイクしたよ」
ブレイクとはサーブを打たれる側がセットを取ることだ。
テニスはサーブを打つ方にアドバンテージがある。
ブレイクを取るってすごく大変なことなのに、西崎先輩は軽々とやってしまう。
その後も西崎先輩はポイントを順調に重ねていく。
今日の試合は三セットマッチだ。ブレイクを決めた西崎先輩はそのまま自分のサーブのセットも取り、勝利を決めた。
全コート同時に始まった一試合目で、西崎先輩が一番最初に勝利を決めた。
「西崎先輩、カッコよかったね」
西崎先輩の試合を見てテンションが上がってしまった。
あれがテニスの試合なんだ。
すごくエキサイティングで、見事なプレイに目を奪われてしまった。
そして、何よりも西崎先輩は楽しそうにテニスをしていた。
隣にいるコウを見る。
さっきコウはキラキラした目で西崎先輩のプレイを見つめていた。
そっか、コウは西崎先輩のプレイに憧れているんだ。
私はどうだろう?
テニスのことがすごく好きかって聞かれたら、素直にうんって言えない。
テニスが好きならもっと上手くなっているはずだもん。
ふと美優が話していたパラレルワールドのドラマを思い出した。
もしパラレルワールドの私がいたら、テニス部に入っているのかな?
美優と同じバスケ部に入ったり、部活見学で楽しそうだったバドミントン部に入っていた可能性だってあるんだよね。
なんてね。そんなIFストーリー、あるわけないのに考えちゃう。
今、私の目の前にあるのはあの時選んだもしもじゃない。
それを選ばなかった現実だけだ。
「何ぼーっとしているんだよ」
軽くコツンとコウが肩を叩く。
「俺の試合が始まったら、真澄も見てくれよ」
「うん、頑張って」
そう言ってコウは晴れ渡った笑顔を向けて試合のあるコートに向かって走り出した。
コウはテニスに素直で真っ直ぐだ。
そんなコウのことがちょっぴりかっこいいなって思った。


