久しぶりにコートに入ったせいか、何だか緊張してきた。
コウと向かい合う。これから私たちはテニスをする対戦相手だ。

「真澄、行くぞ」

コウがサーブの構えをすると、ボールが真っ直ぐに飛んできた。
一緒にテニスを習っていた頃からコウはサーブが上手かった。
そんなコウを私は羨ましいと思いながらいつも見ていた。

フォアハンドでコウのサーブを返す。

サーブで勝てないなら、サーブをしっかりと返せばいい。
そう思って私は練習してきたんだもんね。

コウとのラリーが続く。
この感覚、何だかすごく懐かしい。

相手のボールを全力で追いかけてコートを必死に走り回る。
ラケットを振ってボールを相手のコートに打ち返す。
思い通りに打てるとスカッとするんだよね。

小学生の時はコウとこうやってテニスをしていた。

ああ、そうだ。これが楽しくてテニスが好きだったんだ。

コウとテニスをするのって小学生の頃以来かも。

この勝負、コウには負けたくない。
だって勝った方が楽しいから。
私は楽しいからテニスをするんだ。

何度目かのラリーの後、コウがボレーを打ってきた。

鋭い角度からの切り込み。さすがにこれは追いつけないよ〜。

「フィフティーン、ラブ」

うわ、めっちゃ悔しい〜!
次こそはコウからポイント奪ってやるもんね。

体勢を低くしてラケットのグリップを強く握りしめる。

ラケットと自分がまるで一つになったような気分。

全力で走って、打ち返してポイントを取ってやるんだから。

コウが放つボールを、私は全力で集中して見つめた。