市川さんに負けてから二週間が過ぎた。
あの日からなんかずっと調子が上がんない。
練習しないと勝てないってわかってるのに。
練習なんかしても意味があるのかなって思っちゃう自分がいる。
だって練習したって必ず勝てるかわからないし。
っていうか、私の方が市川さんよりも練習はしているはずだし。
私は小学生の頃、テニスを習って、だからスキルも私の方が上のはずなのに。
それなのに私がどうして負けっちゃたんだろう?
あれから部活が終わる前の三十分間は一年生にコートの練習時間を使ってくれている。
とは言ってもワンセットマッチの試合も一日に一、二試合くらいしかできない。
私はなんかコートに立つ気になれなくて、あれから一回もコートの練習をしていない。
今日だってもうすぐ練習が終わってしまう。
そしたら、また一年生の練習時間だ。
コートに立つのがすごい楽しみだったのに。
今はそれが嫌で嫌で仕方ない。
「真澄は今日は試合するのか?」
コウが相変わらずヘラヘラしながら声をかけてきた。
「うーん、どうしようかな」
「全然試合してねーじゃん。何かあったのか?」
コウってば、こういう時、無駄に勘がいいんだよね。
「別に、何でもない。ちょっと調子が上がんないだけ」
「試合しないと勘がどんどん鈍るぜ」
「うるさいなー、私のことなんて放っておいてよ」
自分に関係ないのにコウは私のことばかりいつも言ってくる。
本当、そういうの困っちゃうよ。
一年生の試合時間になった。一試合目に市川さんが出る。
初心者同士の対決なんて見てても面白くない。
「あの二人、楽しそうにテニスをしているよな」
いつの間にか私の隣にコウがいた。
単調なフォアハンドのラリーばかりが続く。
テクニックがすごいわけでもないのに。
何が面白いのか、試合に出ている二人は笑顔でボールを追いかけて打ち返す。
この二人、何でそんな楽しそうにしているんだろう。
「小学生の時の真澄もあんな感じだったぞ」
「どういう意味?」
コウの言おうとしていることがわからない。
私、あんな感じでテニスをしていたの?
私はもっとテクニックを学んで、あの時から上手くなろうとしてたのに。
「テニスをしている真澄は楽しそうだった」
コウに言われてハッとする。
最近、テニスをしていても楽しいなんて思ってなかった。
もっとテクニックを磨かないと。
もっと上手くならないと。
レギュラーになって試合で活躍したい。
そればかり考えて、全然上手くいかなくて、空回りしてた。
「テニスは上手くなることも大事だけど、どうせなら楽しい方がいいだろ」
「……何よ、偉そうに言って」
コウはたまにすごくストレートに心に届くことを言ってくる。
そんなコウの気持ちを私はいつも真っ直ぐに受け止めることができない。
頭の中ではコウの言葉のありがたさをわかっているのに。
「なあ、この後、俺と試合しようぜ」
「私がコウと? 男女で試合なんて普通しないでしょ」
「真澄はいつもごちゃごちゃうるさいんだよ。ほら、行くぞ」
「もう、ちょっとー」
ちょうど市川さんたちの試合が終わったタイミングでコウに腕を掴まれ、引っ張られる。
昔からコウは私の背中を押して、いや腕を引っ張って外に連れ出してくれる。
「先輩、次は俺と真澄が試合をします!」
西崎先輩はすぐに快諾してくれた。
「ほらな、大丈夫だったろ?」
悪戯っ子の顔をしたコウが小声で呟く。
全く、コウったらいつも強引なんだから。
あの日からなんかずっと調子が上がんない。
練習しないと勝てないってわかってるのに。
練習なんかしても意味があるのかなって思っちゃう自分がいる。
だって練習したって必ず勝てるかわからないし。
っていうか、私の方が市川さんよりも練習はしているはずだし。
私は小学生の頃、テニスを習って、だからスキルも私の方が上のはずなのに。
それなのに私がどうして負けっちゃたんだろう?
あれから部活が終わる前の三十分間は一年生にコートの練習時間を使ってくれている。
とは言ってもワンセットマッチの試合も一日に一、二試合くらいしかできない。
私はなんかコートに立つ気になれなくて、あれから一回もコートの練習をしていない。
今日だってもうすぐ練習が終わってしまう。
そしたら、また一年生の練習時間だ。
コートに立つのがすごい楽しみだったのに。
今はそれが嫌で嫌で仕方ない。
「真澄は今日は試合するのか?」
コウが相変わらずヘラヘラしながら声をかけてきた。
「うーん、どうしようかな」
「全然試合してねーじゃん。何かあったのか?」
コウってば、こういう時、無駄に勘がいいんだよね。
「別に、何でもない。ちょっと調子が上がんないだけ」
「試合しないと勘がどんどん鈍るぜ」
「うるさいなー、私のことなんて放っておいてよ」
自分に関係ないのにコウは私のことばかりいつも言ってくる。
本当、そういうの困っちゃうよ。
一年生の試合時間になった。一試合目に市川さんが出る。
初心者同士の対決なんて見てても面白くない。
「あの二人、楽しそうにテニスをしているよな」
いつの間にか私の隣にコウがいた。
単調なフォアハンドのラリーばかりが続く。
テクニックがすごいわけでもないのに。
何が面白いのか、試合に出ている二人は笑顔でボールを追いかけて打ち返す。
この二人、何でそんな楽しそうにしているんだろう。
「小学生の時の真澄もあんな感じだったぞ」
「どういう意味?」
コウの言おうとしていることがわからない。
私、あんな感じでテニスをしていたの?
私はもっとテクニックを学んで、あの時から上手くなろうとしてたのに。
「テニスをしている真澄は楽しそうだった」
コウに言われてハッとする。
最近、テニスをしていても楽しいなんて思ってなかった。
もっとテクニックを磨かないと。
もっと上手くならないと。
レギュラーになって試合で活躍したい。
そればかり考えて、全然上手くいかなくて、空回りしてた。
「テニスは上手くなることも大事だけど、どうせなら楽しい方がいいだろ」
「……何よ、偉そうに言って」
コウはたまにすごくストレートに心に届くことを言ってくる。
そんなコウの気持ちを私はいつも真っ直ぐに受け止めることができない。
頭の中ではコウの言葉のありがたさをわかっているのに。
「なあ、この後、俺と試合しようぜ」
「私がコウと? 男女で試合なんて普通しないでしょ」
「真澄はいつもごちゃごちゃうるさいんだよ。ほら、行くぞ」
「もう、ちょっとー」
ちょうど市川さんたちの試合が終わったタイミングでコウに腕を掴まれ、引っ張られる。
昔からコウは私の背中を押して、いや腕を引っ張って外に連れ出してくれる。
「先輩、次は俺と真澄が試合をします!」
西崎先輩はすぐに快諾してくれた。
「ほらな、大丈夫だったろ?」
悪戯っ子の顔をしたコウが小声で呟く。
全く、コウったらいつも強引なんだから。


