ふー。あっついな。

放課後。部活の時間。
テニス部は毎回部活が始まる前に中学校の周りを三周走るんだよね。

私たちの中学校では外周って呼ばれて、どの運動部でもやっているみたい。

「何へばっているんだよ、真澄」

後ろを振り返るとコウが涼しそうな顔をしながら走っていた。

「別にへばってないし。コウこそ、部活に来るの遅かったじゃん」

「友達と喋るのも中学生の大事な仕事だぜ」

ニヒヒとコウは意地悪そうに笑った。

そうだよね、コウは私と違って友達がいっぱいいるんだもん。
私は美優くらいしか友達がいないからな。

何だか勝手に心にダメージを食らっちゃったよ。

そんな私に気づいたのかコウが「ま、だから真澄と話すのも仕事みたいなもんだぜ」と言ってきた。

「もう、意味わからないんだけど」

「んだよ、せっかく話しかけてやったのによ」

「無理して私と話さなくてもいいですよーだ」

「誰もそんなこと言ってねーだろ」
「おーい、一年。サボるなよ」

やば、二年の須藤(すどう)先輩にペース落としているところ見られちゃった。

「ちゃんと走ってますよ」

「嘘つけ、伊崎ならもっとペース上げられるだろ」

須藤先輩がコウを見て笑っている。
コウったらすぐに先輩とも仲良くなっちゃうんだもんな。

そのままコウは須藤先輩を追いかけて行ってしまった。
それにしても、コウったらまだあんなに走れるなんて。
あのエネルギーはどこから来るんだろう。

……私も負けてられないよね。

テニス部は部活としては男女混合だ。
もちろん練習は男女で分かれてすることも多いし、レギュラーもそれぞれ人数が決まっている。

だけど私はコウのことをライバル視してる。

一緒にテニスを習ってたんだもん。
私だってコウに負けてばかりじゃ嫌だもんね。

よし、ペース上げていくか。

深く息を吸い込むと、コウの足跡を追うように走り出した。