ダム、ダム。
体育館にバスケットボールの跳ねる音が響く。

オレンジ色のボールを必死で目で追いかけながら、全力でダッシュをする。

止まりたい。
息が苦しい。
 
それでも、今は動き続けないと。

「そこ、足が止まっている!」

部活の顧問の笹波(ささなみ)先生が体育館中に響く大きな声を出す。

笹波先生はクラスの担任の先生でもある。
教室ではおとなしいのに、バスケのこととなるとスイッチが入るんだよね。

竹口(たけぐち)、ディフェンスから離れて! そこにいたらボールもらえないだろ」

急に自分の名前が呼ばれてぎくっとする。

動かないと。そしてシュートを決めないと。

点差は一点。残り時間は……あと三十秒。

もし、私のところにボールが来たら。
私、シュート決められるかな?

一瞬、動きが止まっている隙にボールが美優(みゆ)のところにいく。

美優がドリブルでゴールの内側に切り込んでいく。

さすが、美優。やっぱりバスケが上手いな。

すると、そばにいたディフェンスが私を置いてヘルプに動く。

ポツンと一人になった私は美優の動きを真っ直ぐ見つめる。

やばい、どんどんディフェンスが美優のところに集まっていくよ……。

ああ、もう時間がないのに。

ドリブルをしていた美優と目があった。

真澄(ますみ)!」

美優に名前を呼ばれたと思った次の瞬間、美優は私めがけてボールを放ってきた。
パスっと私の手にボールがきた。

「決めて、真澄」

ええ、嘘でしょ!?

でも時間はもうない。
私が決めないと。

シュートフォームを構えてゴールを見つめる。

何度も練習してきたんだ。
試合でも決められるはず。
これが最後のチャンス。

私のシュートで勝負が決まるんだ。

スッと私の手からボールが放たれた。

綺麗な弧を描きながらボールは真っ直ぐリングに吸い込まれるように向かっていく。

……ってあれ?

ガンとボールはリングのふちにぶつかった。
跳ね返ってボールはそのまま、リングを通らず、ゴール下に落ちていく……。

ビーッと試合の終了を告げるブザーがなった。

スコアボードの数字はそのまま変わることはなかった。